チッコーネ

渇きのチッコーネのレビュー・感想・評価

渇き(2009年製作の映画)
3.5
人生に倦んだ一組の男女が辿るドロドロ絵巻を、ヴァンパイア要素を絡めながらファンタジックに描く。
ソン・ガンホ演じる男性キャラには「常に後ろ向き」、キム・オクビン演じる女性キャラには「ヤケクソに前向き」という、相反する特徴あり。
キムの危うい美しさは特筆もの、演技にやや脆いところも見受けられたが、得難い激しさで充分にカバーする。
後半はふたりの相克が、火花散る血みどろの苛烈で綴られていた。
またキム・ヘスク演じる母親キャラに焦点を当てれば、『自滅へ追い込む復讐映画』とも言える。

女性キャラに『イヴの誘惑』のような原罪を背負わせた脚本はツッコミどころ、だが踊るように優雅な撮影、韓国の家屋でしかないのにどこか無国籍な印象を与えるハイセンス美術など、監督作品ならではの個性が横溢。
商業作品と一線を画すアーティスティックな作風なので「これが韓国映画か!」という思い込みは、禁物(過去の自戒)。