ふう

のぼうの城のふうのレビュー・感想・評価

のぼうの城(2012年製作の映画)
3.7
げに美しき哉、萬斎殿!


右向いても左向いても超豪華俳優陣で埋め尽くされた時代劇『のぼうの城』
そのあまりに絢爛なキャストと現代的時代物への抵抗から見ておりませんでしたが、いやあ面白かった!

序盤はなかなかに冗長な感じで、こいつはお昼寝映画かなとか思っておりましたが…
大見せ場、あの野村萬斎さまの船上での田楽踊りを見せられたらね!
ひょろろん ひょろろん!
(ひょろろん!ひょろろん!)

足づかい、視線、身のこなし、どれを取ってもとっても美しい!
田楽の内容としてはとにかく下ネタ。
船の上で放尿しだすわ、まぐわいだすわ、とにかく猥雑である、の、だが。
彼の所作ひとつひとつに惹き付けられ、
軽く愉しく飄々とした踊りに、こちらもなんだか心地がよくなる。

"2万の民衆の心を掴む長親の田楽踊り"

という荒業への説得力が凄まじい。
正に野村萬斎にしかできない所業。
特に、半身を女性に見立てて一人二役でひしと抱き合うシーンなど、本当に半身が別の人間の動きをしていて、何がどうなっているやら。
長親のフリに合わせて民衆も声を揃えて歌い踊り出すのだが、そんなお祭り騒ぎになればなるほど、彼の目がギラギラ輝き出す。完全に獲物を捕らえたヘビの目である。

ぐうううううっ!
昔はヘビ目の男がどちゃくちゃ好きでしてね。普段死んでる目がギラッてなる瞬間がたまらなく、こう、性癖にささるといいますか。ただ悲しいことに、そういう人ってクズか私に興味ないかの二択なんだよね…
働き出して、疲弊していくにつれて刺激よりも優しさが欲しくなって、リスのような目をした旦那に惹かれたよね。よかったよかった。

話を戻しまして。
とにかく萬斎さま迫真の田楽踊りは日本映画史に残る名場面ではないでしょうか。
そしてその後の怒涛の展開と、やや呆気なく終わるラスト、後半はどこをとっても魅力的でした。
時折CGがすごく浮いてみえるけれど、2012年公開映画ですし、しょうがない。むしろそのチープさが役者さんの生の演技を引き立てるといっても…うーん、それは言い過ぎかな。
良くも悪くも野村萬斎が異彩すぎて、他が霞んでしまうところもありましたが、他俳優陣もみなさま素晴らしかったと思います。特に石田三成公を演じた上地雄輔さんにはびっくり。知将が似合うとは思わなかったです。

何はともあれ、もうね、すごくすごーく狂言が見たくなりました。西の人間なので茂山一門のお豆腐狂言推しでしたが、東京にいる間に和泉流の狂言もちゃんと見ておけばよかったなあ…
ああ、早く舞台が観に行けるようになりたいよ!
ふう

ふう