不二子

パフューム ある人殺しの物語の不二子のネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

映像では伝わらない〝香り〟を表現するというアイロニー。最高に変態的で狂気で馨しい。


香水が大好きという簡単な理由で観てみたが、お気に入りになった。

何もにおわないはずなのに映像からつたわってくる噎せ返るような、湧きたつようなにおい。魚、下水、人、花、香水、そして人。映像から感じるにおいってすごい。

人によって感じ方が違う映画のようだ。私なりの考えは、とにかく皮肉の嵐。

ジャンにとってにおいというのは生や存在価値そのものだったが、自分にはにおいというものが存在しない=存在価値が見いだせなかった。まず1つ目の皮肉。だからこそ、女という命の源で自分を産み落としたものから生であるにおいを奪い取ることで存在意義を見出したかった。ここが2つ目の皮肉。究極のにおいを手に入れたところで、人々はジャンにではなく、〝におい〟に愛を示した。つまり、ジャンはどんなに愛される香水を作ったところで、自分自身が愛されなくて存在意義がないということに気が付かされる。3つ目の皮肉。ジャンは生を求めて多くの命を奪い、生に固執してきたはずなのに、自らの生を経た地で生を絶つように仕向ける。4つめの皮肉。運良く生き延びてきて、これからもあの香水さえあれば生きていけたはずなのに。

ざっと書いたがまだまだ皮肉めいたところはたくさんある。このアイロニーこそがこの映画の面白さであり、悲しみだろう。

個人的に惜しかったのが、途中から入ってくるファンタジー要素。せっかくリアルな感じで来てたのに急に笑わせるようなファンタジーな感じのシーンが入ってくるのが残念だった。

究極のフェチってこういうことなんだろうな。
不二子

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