ドント

ザ・ウーマン 飼育された女のドントのレビュー・感想・評価

3.5
 2011年。森の奥にいた野人(女)を躊躇ゼロで捕まえてきた弁護士の男、庭の倉庫を改造して女を監禁し、家族(妻、高校生の長女、小学生の長男、幼稚園くらいの次女)に「野人を捕まえたぞ! 飼育……じゃなく教育して文明化してあげよう!」と言うがもちろんそんな理由で監禁しているわけはなかった。次第に明らかになる男どものゲボクズド外道ぶり、そして女(たち)は!
 原作は残虐残酷小説のレジェンド、ジャック・ケッチャムで、食人族三部作の最終作の映画化。原作未読。ケッチャムということで内容のある程度のエグさはお察しください。野人を捕まえてワイヤーで拘束して飼育調教という時点で外道度100なのにこのお父さん、さらに外道ポイントを積み重ねて、というか前からそうだったのが明らかになっていって物凄い。
 家父長制の煮凝りに、昭和の劇画に出てくる悪党を足して倍増ししたような奴である。「女はヒルだ。働いている男に寄生して血を吸う生物だ。つまり人間じゃないんだよ。役に立つのはヤるときだけだ!」とか言う奴、2023年だと逆に出せない。おまけに息子さんも大層な加虐パーソンで、父親は「まぁいいじゃないか……思春期の男の子だろ?」とか言う始末。あの、やったことがそういうレベルじゃないんですよ。まぁもう救いようがない。
 ご家族の女性ふたりも耐えて耐えて耐えるわけですが反論したり怒ったりしたら脅迫、ビンタ、腹パン。そして新たな被害者と、明らかになるもうひとりの被害者。これはもう殺すしかない、男は滅ぼすしかないぞ、と思っていたところに野人さんが満を持して殺りに来るシーン、ブチ上がりました。神々しく見えます。以前は人を狩って喰ってた女性ですがまぁそれはそれ、女として、人間としての怒りが炸裂して大虐殺してくれます。でももっと苦しめて殺してほしかったな……
 が、しかし。作品全体としては実にこう、ルックが安っぽく、演出も貧しくて、ちょくちょく挟まれるBGMが視聴の興を削ぐこと甚だしい。説教モノである。もっと才覚のある人が撮っていたら50倍は面白く、何だったら映画の歴史にクッキリと足跡を残していたかも。普通に見えてドクズの父や忍耐の母、つらそうな長女ほか家族側の演技もよければ、野生の力がすごい野人ウーマンさんの隙あらば噛み殺すオーラは抜群だったので余計にもったいない。惜しいなぁ……。今こそリメイク希望。
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