荒野のジャバザハット

トールマンの荒野のジャバザハットのネタバレレビュー・内容・結末

トールマン(2012年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

久々のリバーシムービー。

パスカルロジェの映画はホラー的売りで世に送られるが毎回割と社会派な作品であることが多いのだが、中でも今作は突出して問題定義を投げかけてくる作品。

最後までセーブザチルドレンをテーマにしているかのような顔をしているが実は社会構造の根っこにある政治の腐敗に全員が目を背けているように思えて恐ろしかった。

死んだ町、未来のない穴蔵での負の連鎖を断ち切る事を名目にヒーローの如く影で動く彼らの存在が明らかになる時、一転して町の全員が奏でる罵倒が真っ当な台詞であったにも関わらず嫌悪感に様変わりする。
既に子供と大人との狭間に立ってしまった彼女はラストに不安を募らせこちらに問いかける。

"間違ってないよね?"

閉鎖され生きる希望を奪われた人々が唯一生きる意味を与えてくれる存在を富裕層に奪われ、何が正義だよふざけんじゃねえ。
結局は巨大過ぎる権力に屈服して更に続く暗い未来を構築するのに手助けしちゃってんじゃねえか。
ただ小さくか弱い力しか持っていない俺たちに出来るのは目の前にある、目に見える希望に手を伸ばすしか出来ない事実、それがまた辛い。。。

また憎いのが冒頭のコールドロックの風景などでそれを映画的に伝え、でも全然主張せず自然にしているところ。本当上手え、いや美味えな。ご馳走様です。
未来を見ているように思え足元しか見ない錯覚の恐ろしさ、そんな怖さを感じた。

ホラーのクリシェをチラつかせしっかりと心を掴んだのちに見せる問題定義。パスカルロジェ、なんちゅう胸糞ムービーを作ってくれるんやお前は…天才か!
今作は異色扱いと見せかけて全然ブレてない、いつもの如く嫌な嫌な、地獄のような安定のロジェ作品でした。

監督初期の作品マザーは未見だけど、もしかしたら今作との繋がりが伺えるのかな?
他のレビューを見ていると円盤にはロングインタビューがあるみたいなのでそちらも是非見なきゃ!