ヨウ

ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日のヨウのレビュー・感想・評価

4.2
洋上でボートに乗り合わせた虎とのサバイバルを含めた冒険譚と思いきや、幾つもの宗教的寓話を含ませたかなり重厚な物語だった。

映像はファンタジー的な冒険譚を表現する為にかなり綺麗だが、あまりにも綺麗過ぎて現実感を伴わない。このある種、現実離れした映像が、最後の独白があるからこそ効果的に活きてくるのだろう。

虎の名前がリチャードパーカーである理由、虎がいなければ自分は生きられなかったという台詞にかくされた本当の真意、去り際に振り返らなかった虎に号泣した理由、食人島のミーアキャットが意味するもの、そして割り切れない数字(パイ:円周率のπ)の暗喩するもの、生きる為には物語を物語る事だと父親のさり気ない教訓、乗り込んだ動物と主要な宗教のメタファー、実際に起こったミニョネット号の事件、カルネアデスの板とカニバリズム…

分からなかった部分を解説サイトを読ませてもらい、改めてDVDで再度、観直してみる。

展開が遅いなと思った前半、無関係で蛇足だと思っていた幾つものシーンが、後半に起こる出来事を象徴していたりと、驚きの連続だった。確かに長い前半部分だけど、最後のドンデン返しを意識して逆算して見ると不必要な部分が実はない。本当に計算され尽くして作られてる事が改めて分かる。
そしてあの綺麗なCGが、それを観せる「目的」ありきの作品でなく、作品を物語る上での重要な「手段」として徹底している事が、何よりも凄い。

冒険譚としても、生きる指針探しの精神の旅としても、本当に素晴らしい映画だと思う。
ヨウ

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