J四郎

ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日のJ四郎のレビュー・感想・評価

3.8
冒険小説「パイの物語」を原作に持つアドベンチャー映画。
内容はサブタイトルがおっしゃる通り、小さな救命ボートでトラと漂流サバイバルをする。
と偉そうに書いてますが、すんません原作は読んでません。

この映画はとにかく映像が美麗!
今回、ブルーレイで観たけど幻想的な映像美に魅入ってしまった。
うちの非4Kでコレなら、劇場ならどんなんやったんやろ?
特に黄昏時、鏡面のような海の絵は一番印象に残った。
公開時には3Dをウリに作られていたらしく、映画館で観ておけば良かったな~と今更ながらに思う。

主人公の少年パイ(本名ピシン、インドでは小便って意味の悲劇的な名前)はキリスト教、ヒンドゥー教、イスラム教と三つの信者。
んな無茶な?と思ってると、コレはテーマ的に効果的な設定だった。
漂流するような極限状態では誰しも神に頼らざるを得ない、それはどの宗教でも同じだ・・という製作側の狙いがあったみたい。
その為、それぞれの宗教哲学的な部分も見え隠れする。
思った以上に寓話的ですな~。

トラの名前はリチャード・パーカー。
スパイダーマンで何だか聞いた事ある名前だが、調べてみると19世紀にミニョネット号事件というのがあって、食人にまで至った漂流事案だったらしい。そこに乗っていた少年(食われたそうな)がこの名前。色んな物の元ネタになってそうなこの事件、ココから取ってるのかな?

漂流シーンはリアルとファンタジーの境目にある感じ。
決してリアル感溢れるサバイバル物ではない。
途中から割り切って、ああ~そういうリアリティレベルの作品やね?と素直に従った。
時折入るファンタジックな世界は、まるで現世から離れて神の領域に片足を踏み込んでいるよーに感じた。
見方を変えたら三途の川を渡りかけていたのか?

しかし、後半であまりにファンタジックすぎるある場所が出てくる。
あの場所の形がアレなもんで、ここも色々と深読みできそうだねぇ。
アレ?と思っていると最後の最後でどんでん返しがあった!
なるほど~、これはヤラレタ。
判断はコッチに任せるってことか、なんてこった。

暗喩的表現が多々見られるので、見直して考察するのも楽しそう。
でも、んなクソ面倒な理屈をコネ回さないでも映像だけでも楽しめました。
出来ればコレ、3Dで観たかったかな~?
CGを多様しているものの、漂流している絵の説得力はハンパ無かったし。
タイトルから子供向けやん?とスルーしていたのをちょい後悔しとります。
J四郎

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