よねっきー

ムーンライズ・キングダムのよねっきーのレビュー・感想・評価

ムーンライズ・キングダム(2012年製作の映画)
5.0
完璧な恋愛映画だと思う。恋はいつだって冒険で、バイオレンスで、カタストロフィで、ちょっぴり寂しいのだ。

愛し合う2人が繰り広げる逃避行は、ロマンチックというにはちょっと凶暴すぎる。彼らの恋愛模様も、真面目に見るにはちょっと幼稚すぎる。だけど周りの大人や子どもや犬や鹿やその他ノアの方舟乗船待ちの動物たちを巻き込みながら、ぐねぐねと解放区を目指して歩いていく彼らの姿には愛を感じずにいられない。これこそ恋だよ、疑う余地もなく。

おれがウェスの映画で好きなのは、意外といつも「男の視点」から物語が描かれるところ。『ロイヤル・テネンバウムズ』のジーン・ハックマンとか『ライフ・アクアティック』のビル・マーレイとかいつも情けない男が出てくるのが最高なんだけど、今回はブルース・ウィリスとエドワード・ノートンの哀愁が素晴らしかった。リーダー失格かもしれないけど、保護者失格かもしれないけど、それでもおれらは小さな爆発の中に立ち向かっていかなきゃ行けない。轟く雷鳴と荒れ狂う嵐に立ち向かわなきゃ行けないよな。

タイトルも良いなあ。世の中のどの2人だって、いつも映画みたいに美しい恋愛をしてるわけではない。初デートは夜景の綺麗なレストランじゃなくて寂れた動物園だったりするし、初キスの味はレモンキャンディーじゃなくてカニチャーハンだったりする。誰だってそうだし彼らだってそうだよ。でも彼らがあの夜愛し合ったのは「3.25海里 潮流口」なんかではなくて、月の昇る王国なんだ。どんな恋愛のワンシーンだって、その人の心に残る限りは美しくて詩的で永遠だ。
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