回想シーンでご飯3杯いける

フライトの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

フライト(2012年製作の映画)
3.7
航空機事故と、その後に開かれる国家運輸安全委員会を題材にしているのは、トム・ハンクス主演の「ハドソン川の奇跡」と同じ。そして、国内配給会社が書いたコピーやあらすじがサスペンスに偏り過ぎて、作品の魅力が伝わっていないのも同じ。非常にもったいない。

この「フライト」に関しては原題からしてフライト・パニックを連想させるもので、国内配給会社以前の問題もあるのだが、「驚愕の真相が暴かれる」というコピーにはかなり違和感が。

本作のテーマは、デンゼル・ワシントン演じる主人公の操縦の腕や空撮技術にあるのではなく、彼がアルコールとコカインの依存症で、その事実を隠すために嘘で固められた人生が、事故をきっかけに変化する部分にあると思う。操縦シーンは最初の30分で終わり、残りの大半は、彼が同じ病で悩む女性と知り合う中で、自身を見つめ直す様子に割かれる。

安全委員会のシーンさえ、終盤に端的に挿入されるのみ。最後の最後までドラマの結末を予想させない構成が良い。実に良く練られた、再生の物語と言えるのではないだろうか。本国アメリカのポスターには飛行機が描かれておらず、何ならタイトルの「Flight」は主人公の人生の再出発を比喩するダブルミーニングなのかもしれない。