東海テレビ制作、冤罪の疑いから合計9回もの再審請求がなされた死刑事件として有名な名張毒ぶどう酒事件を追ったドキュメンタリー。事件当時の映像も交えているが、死刑囚となった奥西勝氏を仲代達矢、その母を樹木希林が演じる再現映像が本作の大半を占めている。あばら屋で一人、震える手で手紙を書く樹木希林を見ていると、頼むからこんな辛いものを見せるのはやめてくれという気持ちになる。無実を確信していなければこんな映画は作れない。
同時に、死刑囚の生活を描くことによって、本作は死刑制度に対する大きな問題提起ともなっているのは重要だと思う。
世間が大した気にも留めず「ああ、この人が犯人なのか」と日々のニュースを受け流すように、僕も「ああ、この人は無実の罪で人生を葬られたんだな」と深く考えずに確信することにする。真実がわからないのなら、それは無罪なのである。能力的にも物量的にも精神的にも、それが限界。