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風立ちぬのVigocultureのレビュー・感想・評価

風立ちぬ(2013年製作の映画)
5.0
何度も観ていますが観るたびに気になるシーンがある。
回を重ねるごとに無言のシーンに目が向くからですね。

『夢と狂気の王国』は間違いなく併せて観るべき作品です。
宮崎駿の『8 1/2』でしょうか。

無言のシーンが多いし、関わる相手も無駄に深掘りしない。監督自身が言うようにそれは次郎が優秀だから、昔の優秀な人インテリな人は寡黙だったという理由のほかに、自分の中に答えを見つけようと、あるいは見つけている常に強い眼をしているからでしょう。
あるいは生きている世界が違って観ている景色が違うと言ってしまえば安直ですが、
次郎の世界に現実をも夢も区別ないんですね。
カプローニ同様、「夢の王国」として現実を生きているわけです。
はじめに「僕の夢です」と答えていた世界が最後には「地獄かと思いました」と言うほどになっているわけです。

実は生き苦しい世界なんです。でもそれを感じさせない表情をしていたのは、次郎自身がそう感じていなかったからです。それが"創造的人生の持ち時間10年"であり、そう感じそうになったのは軽井沢にいくキッカケとなった挫折ですね、でもそこほ菜穂子との出会いで持ち直して、菜穂子のおかげで最高のものが出来上がるんです。

でも最後には奥さんも、作ってきたものの価値もすべて失ってしまう。それでも最後の最後に大好きな菜穂子に「生きて」と言われる。
失いかけていた意味を菜穂子のおかげて取り戻して「ありがとう。」となる。
だからキャッチコピー「生きねば」
なんだと。

と、ここまで考えなくても、
仕事に打ち込む姿、物想いのタバコ、仕事をしながら生きるという誰しもに共通で誰しもが共感できる要素に溢れている。
風を感じる、風が伝えている物語。
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