良すぎる。
観てるこっちの心も救済されたなぁ。
(なにをいまさらな)最高にゆったりと贅沢な映画。
途中、セリフ関係なく今これを観られていることの多幸感でウルッときてしまって、それがどのシーンだったかは覚えてない。なんでもない中盤だったはず。
中盤の淡々と物語(とキャラクター)を育てていく過程がほんとに見応えがあった。
登場人物全員に目がいくし、全員の人間性が気になるし、家福だけがずーっと脇役で、脇にいる人に常に目がいくようにキャラ付けされていて、そのためにそれそれの”顔” もいいキャスティングだなぁと思った。
かといって各キャラクターの人生エピソードは強いわりに意外と気に留まらなくて、
全キャラクターが必然のもとに配置されていてノイズがなく、加えて家福が他人に気に向けていない(他人に期待も絶望も抱かないように心理的な距離を保っている)からかな。
そして最後の最後に家福自身が”主役”だったと気づく。
主役でいないといけないんだと。
そしていつの間にか自分自身からも距離を取ろうとしていたことに気づく。
「淡々と、なおかつ印象的なシーン」に仕上げるためのショットと音楽の運び方、光の具合が本当にいいアンサンブル。
家福の”役者喋り”で淡々と紡がれていく具合も本当に心地よく、全部が適切な長さとタイミングで処理されてて、「あー、この一呼吸分 余計!」とかがなかったのがすごい。好みだとしても、その一呼吸分長かったり短かったりってほんとあるから。
それをまとめて最後の北海道までとってたんだっていう。
あそこまできたらどうぞじっくりやってくださいっていう。
物語の筋は原作にあるとしても、他人への希望と期待ではなく、リアリズムに帰結して生きていくというのも本当よくて、個人的には救われた。