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カモン カモンのVigocultureのレビュー・感想・評価

カモン カモン(2021年製作の映画)
4.0
おっさんと子どもの距離で語られる作品に悪いものはない。
『パリ、テキサス』『マンチェスター・バイ・ザ・シー』『そして父になる』

今作は特に”母親”にフォーカスを当てながら、”母親”を不在にして描くことに長けていた。父親の描写もくどくならずにいい塩梅だった。あれ以上見せられてたら萎えてた。

コミュニケーションにおいては実は子供も大人も差はないっていうのはほんと真理だなと。

セピア寄りのモノクロのトーンと、たまに印象的なショットと音楽の入りと録音が抜群によかったし、10年代のドリームポップ×映画のど真ん中をあらためて観ているようで、10年も経たずに懐かしさまで感じた。
ホアキンでいうなら『her』を思い出して。
周囲がノイズにならずに主役に集中できるのはモノクロのわかりやすさですね。
特に録音の良さは『リスボン物語』的な人物×街 の相乗効果があって、空気感がしっかり伝わる。

監督がこの数年で感じていた想い(と読んでいた本)を、インタビュー形式で青少年たちに語らせてしまうのはちょっと下品ではあり、その内容に同意しつつも映画的な評価としてはマイナス。保険のCMの手法だよ。
と思う一方で、もはやなりふり構わず(戯曲化せずに)声を吸い上げて投げかけるしかないところまで来ているんだぞという社会へのステートメントですよね。その危機感。アートが上品ぶって暗喩的に表現している楽観的な余裕はもうないぞと。

今回、映画的な演出でこれ嫌いなやつだと認識したのは、挿入歌の歌詞で持っていこうとする音楽の使い方。こればっかりはマーベルだろうが小さい映画だろうがマイナスです。音楽映画じゃない限り要らない。
画で語れないならセリフ(鼻歌)に留めて欲しい。


子役のかわいさも抜群に良し。子役のキャスティング命ですからねこの手の映画は。
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