Eryyy678

かぐや姫の物語のEryyy678のレビュー・感想・評価

かぐや姫の物語(2013年製作の映画)
4.0
「私は誰のモノにもならない!」
運命に翻弄されるかぐや姫の物語。

竹から生まれたかぐや姫。媼と翁に育てられ、木地師の少年、捨丸たちと共に、自然の中で幸せに暮らしていた彼女。しかし、高貴の姫君として生きるべきだという翁のはからいで、生まれ育った山を離れて、都で生きることになる。

有力な男性に見初められることが良しとされた時代もあったのでしょう。

「私がこうすることで、喜ばぬ女はいなかった」
権力者が言うと、これほど傲慢な言葉もないですね。その人自身のことも知らず、地位と権威の名の下に得られる幸せに、果たしてどれほどの価値があるのか。

″それぞれの幸せの形〟

自然とともに、本当に大切な人のそばで自由に生きること。いかに裕福でも、心を殺していればそれは死人と同じで、自分にとっての「自由」や「幸せ」を希求するかぐや姫の姿には、胸を打たれます。

近年のジブリ作品は、結構ひねった内容のものが多いように感じますが、こういう割とストレートなテーマの内容は、逆に新鮮で感動しました。

大筋のプロットは、やはりかぐや姫のお話に沿っているので、月の世界も存在する。麗らかな音楽とともにやって来た月からの使者達は、謎の力で人間達の攻撃を受け付けず、人々を無力化する。彼らは侵略者ではなく、ただ姫を連れ戻しに来ただけ。一滴の血も流さず、至極あっさりとその目的を果たしてしまった。神のごとく。あまりにも無機質に、無感情に。この世には「抗えない運命」というものが存在していて、月からの使者は、まさにそれを象徴するかのよう。それは、「自由を求める」というこの映画のテーマにとって、逆説的なアンサーにもなってるような。
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