ぬまつ

メッセンジャーのぬまつのレビュー・感想・評価

メッセンジャー(2009年製作の映画)
4.2
これまでの映画でも何度か見る機会があった、「○○さんは戦死されました」と訃報を伝えるだけの、軍服を着た人。
今作はその「メッセンジャー」に焦点を当てて描き、アカデミー賞で助演男優賞と脚本賞にノミネートされた作品。

大切な人の死を急に告げられた人たちの心の動きが丁寧に哀しく描かれています。
そんな感傷的になっている遺族と対面しているメッセンジャーは、感傷的になることが許されていない。
その対比がまた見ていてツラいです。前半の見どころはそこでしょう。

本作では実際の戦場のシーンは一切描かれていません。
でも代わりに登場人物たちが語ってくれます。
変に戦闘シーンを映すよりよっぽど生々しかったというか、哀しさがひしひしと伝わってきました。
「戦争で夫のニオイが変わってしまい、夫が嫌になってしまった。でも戦死を知り、また好きになった」
この台詞が今も哀しく心に残っています。

メインの2人が女たらしで荒れすぎていて、中盤は「そんな汚いシーンいらねぇよ」とかなり嫌気がさしていましたが、ラストでその嫌気もほとんど吹き飛びました。
今思うとその嫌な性格は、彼らメッセンジャーもちゃんと心を持つ不器用な一人の人間であるのだということを伝えるための、有効な手段だったように思います。
戦争の悲惨さを味わったからこそ、誰かに甘えていないと怖くて生きられなかったのかもしれない。

戦場から帰還した兵士は、自殺が絶えないと聞きます。
自分たちが思っている以上に悲劇的な戦争の恐ろしさを遠回しに、でも心に届きやすい方法で描いた良作だと思います。
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