一人旅

ハッシュパピー バスタブ島の少女の一人旅のレビュー・感想・評価

3.0
ベン・ザイトリン監督作。

外界から隔てた小島に暮らす少女と彼女を取り巻く人々の日常を描いたドラマ。

劇作家兼女優:ルーシー・アリバーの戯曲「Juicy and Delicious」を新人監督:ベン・ザイトリンが映像化した低予算インデペンデント映画で、主演を務めた新人子役:クヮヴェンジャネ・ウォレスは本作の演技により史上最年少でアカデミー主演女優賞にノミネートされています。

「バスタブ」と呼ばれる小島で自給自足の暮らしをしている6歳の少女:ハッシュパピーを主人公にして、突如襲い掛かってきた大嵐によって水没してしまった島で生き延びようとする主人公と彼女を取り巻く人々―重病の父親や気のいい島民たちの関わりを、手持ちカメラによるドキュメンタリータッチの映像&少女視点により映し出しています。

地球温暖化とそれによる氷河の崩壊といった環境問題を忍ばせた問題提起型の少女ドラマで、少女の眼を通じて遥か昔に断絶した種の動物が幻想的映像により具現化されていきます。過去・現在・未来の地球と生命の歩みの集約体として捉えられたバスタブ島で慎ましく生きる人々の日常風景を描き出し、綿々と繰り返される生と死、自然と人間の本質的関係性を浮かび上がらせています。

素朴で小粒な島映画ながら主演のクヮヴェンジャネ・ウォレスが見せる自然体の演技に魅了される作品で、まるで実際にその島で暮らしているかのような錯覚まで感じ入らせてくれます。
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