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ヘルレイザー3のblacknessfallのレビュー・感想・評価

ヘルレイザー3(1992年製作の映画)
3.8
『ヘルレイザー』シリーズ、リバイバル上映してるね。今まで観たことない人も劇場に足を運び、かなり盛り上がってるようでオールド・ファンとしては嬉しい。
それはそれでいいんだけど、SNS見る限り、行ってきたオールドファンのノリが相変わらずなんでツラいな。今だに、エクストリームなゴアが分かる少数派の俺達やべぇ🤣って選民意識ムーヴかましてるのが散見されなんとも鼻白む思いが。
確かに少数派っちゃ少数派なんだけど、本シリーズに限らずけっこう定期的にリバイバルやってるじゃん。ホラーって。去年の『食人続』とか。で、みな、それなりに盛り上がってるじゃん。て、ことは言うほど少数派でもないし、喜んで観てる人達も自分達が思ってるほど特殊でもないんだよ。いい加減、悪趣味な映画好きなぐらいでイキるのはやめろ!
おれもおまえらと同じように悪趣味な映画やブルータルな音楽、そしてシリアルキラーも好きでおまえら見たくマンソンやダーマーのTシャツ買ったりしてるんだよ。つまり端から見たらおまえらのような悪趣味大好きサブカルイキりおやじと同類に見られる可能性が高いんだ。いい迷惑だ。おまえらもおれも比較的よくいる量産型の"変り者"に過ぎない。頼むから謙虚になっておくれ🥺

リバイバル上映にはまったく興味なかったんだけどCSで遭遇したから観ちゃったよ、『ヘルレイザー3』。何年ぶりかな?

当時も思ったけど魔道士(セノバイト)ピンヘッドのキャラ変わりすぎだろ、そして映画のテイストも。
ピンヘッドがセンセーショナルだったのはゴシックでSM的なフェティッシュなルックスというそれまでのスラッシャー達と比べて美意識の高いスタイリッシュなルックスと圧倒的に知的で哲学的な存在だったから。善と悪、痛みと快楽の関係性から人間の愚かさを語り、人の心の弱さや欲深さ、人間同士の関係の歪みに揺さぶりをかけるメフィストフェレスのようなカリスマがあった。で、ストーリーもそのコンセプトに沿った文学性を伴ったもので1作目はホラー映画史、スラッシャー映画史に残る傑作だった。

ルックスこそ同じだが本作のピンヘッドはそんな気品やカリスマ性は皆無で。ひたすら人体破壊に没頭しゲスくて嫌みなセリフを吐く、『エルム街の悪夢』のフレディに寄った俗なスラッシャーになってしまってる笑
ギランギランのモトリー・クルーのようなMTVメタルがかかるクラブで「さあ、始めっか」😆と吠えクラブの客を派手に殺戮無双するなんて、ピンヘッド、人格変わりすぎだよ笑
テーマソングもモーターヘッドだしメタルをフューチャーした時点でパーティースプラッターに舵を切るって狙いだったんだよね。
そういうアゲアゲ・スプラッター・スラッシャー映画として観ると悪くないんだよな。

復活する時にセクシー美女の全身の皮を剥いでシュルシュルと取り込んだり、ナイフの形のレーザービームみたいのがスボッと口から入って頭を貫いたり、工夫と遊び心に充ちたゴア・スプラッターは楽しめる。
それと当時は格調がなくダサいと不評だった。ピンヘッドの手下のセノバイト達のマヌケなルックスも笑える。
テレビカメラと合体したセノバイトがレンズを伸ばして額を貫いて殺すシーンやCDコンポと合体したセノバイトがCDを手裏剣のように飛ばして切り刻んで殺したり、これぞパーティーB級スプラッターと言ったバカバカしいシーンの連続が心地好い笑 しかし、CDを最先端のクールなものに見立てて取り込んでるところがいかにも1992年作って感じで懐かしい気持ちになるよな笑
ゴアエフェクトもCG以前の手法で全般的にいい意味で時代を感じさせてくれる。
でも、ちょっと時代を先取りしてるかもと思ったのは、主人公のテレビレポーターの女性とクラブ通いしてる風来坊の女性が関係性がシスター・フッド的な演出なってるところ。
前半、変なオブジェに封印されてるピンヘッドが復活するためにヤリチンのクラブオーナーに女を殺させる、それを事件として追っていた主人公がオーナーの元カノだった風来坊と知り合う。このクラブオーナーが今だったら絶対Me too案件で告発されるタイプ。こいつのミソジニー全快のゲス野郎っぷりにも現代性を感じた。
でも、そういう先進的な意識があったわけじゃなくて単なる偶然だろう。オーナーも元カノもさっさと殺られてしまうから笑


当時は本シリーズやピンヘッドに過剰な思い入れがあって噴飯ものと感じた本作だけど、そんな思い入れも消えた今観ると、バカ・スラッシャー映画としてけっこう楽しめた。
ホラー映画ファンは好きじゃねぇけどホラーは好きなんだよなぁ。
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