着想は素晴らしい。戦時中、木下惠介(加瀬亮)が映画監督をつづけるかどうか迷っていた時期にスポットをあて、疎開の道中を一種のロードムービーとして描いている。
とはいえ、映画としては完成度が高いとはいいがたい。1時間半くらいの短い映画だが、ラスト10分は木下のフィルモグラフィ。したがって本編は1時間20分弱。それでも全体に間延びして感じられた。
誰しも思うだろうけど、便利屋(濱田岳)との川辺での会話がクライマックス。それ以降は要らなかったのじゃないだろうか。
川辺でのシーンの前に、学校の先生の宮﨑あおいが出てくる。それをフト見ていた木下(加瀬亮)が指でフレーミングをする。いい場面だった。これだけで木下がいついかなるときも映画を忘れていなかった、ということが伝わる。