怨念大納言

共喰いの怨念大納言のネタバレレビュー・内容・結末

共喰い(2013年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

「血を憎む」という映画。
先祖を憎む、親を憎む、自らを憎む。
ぶつけようもなく、解決しようもなく、不幸の泥沼へ入り込む他はない生き地獄。

同じく「血を憎む」映画として、あの日欲望の大地で、という映画がある。
あの映画もひどい田舎で、性に絡む血を憎んでいた。

田舎程、血の繋がりへの意識が強まるのだろうか?
私も田舎出身だけど、田舎って大抵の同級生の親の名前も職業も全て知っている。
親のやらかしは子供にまで瞬く間に伝播する。
そういう田舎で、親がクズだってのは本当に辛い。

がさつで、下品で、性に奔放。
そういう田舎の負の側面を全面に出されていて、岡山弁がその土臭さに拍車をかける。

凄まじいのは石光研演じる親父のクズっぷり。
無学で無教養、セックスくらいしか頭にないのに、そのセックスで女性をボコボコに殴る。

この父親がクズであればある程、菅田将暉演じる主人公の苦しみや葛藤に説得力が増すので、その働きは大きかったように見える。

それから、三人の女性の強かなこと。

芥川は平安の終わりを舞台に羅生門を、漱石は明治の終わりを舞台にこころを描いた。
時代の移り変わりのなかで、自らが全時代に取り残されたような寂しさが、どちらの作品にも漂う。

両腕を縛られて、千種と性行為を行う遠馬。
平成の新時代は、彼にとって幸福か不幸か。
怨念大納言

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