OASIS

さよなら渓谷のOASISのレビュー・感想・評価

さよなら渓谷(2013年製作の映画)
3.0
緑豊かな渓谷で起こった幼児殺害事件の犯人である母親の逮捕をきっかけに、その不倫相手及び共犯者として疑われた男とその妻の秘密が明らかになっていくという話。

秋田連続児童殺害事件(畠山鈴香事件)を基にしたと思われる逮捕劇が話の中心かと思いきや、この事件は全くといって関係無く、その隣に住む夫婦が主人公であり二人の過去について話が展開して行く。
面白くなりそうな事件が出オチとしか使われていなくて、ここがかなり予想外だった。
そこを掘り下げるべきでは無いにしろ、映画としての面白さをとるならそちらの方が題材として優れていると思う。

この夫婦関係の秘密から炙り出されて行く過去の罪と、現在に至ってもなお愛情豊かには見えない生活を送る二人の異様さからは「幸福」は一切感じられなかった。
この夫婦の対比として描かれる記者とその妻の関係も、前半と後半では大きく変化しており、そちらには確かに今の居場所に幸せを感じる描写があった。
真木よう子の常に死んだ目が見つめる先には夫婦としての幸福があったかもしれないが、それを確認する術は無くただ観客に委ねられている部分は良かったと思う。
しかし、台詞も少なく間が開き過ぎな点があってどうしても退屈に感じてしまった。
真木よう子の滑舌が少し気になって、聞き取れない部分もありました。
一応はミステリーの流れなのだが、衝撃の秘密が明かされたとしても淡々と進んでいくので推進力は大分弱い。

山の匂い立つ緑や、蝉の鳴き声が止まず蒸し暑い山奥の湿った静けさ、寂しさをたたえた街並みなども素晴らしかった。
そして体温を感じる真木よう子と大西信満のベッドシーンの数々も堪能した。
しかし、ただ消費するだけのセックスからはエロスは感じられない。
ただ、あんなに大胆に脱いでいるのに肝心な部分が見えないのはどういう事か。もう少し頑張れたでしょうに・・・と思いました。

吉田修一の原作ではもっと台詞による表現が多いとの事で、そちらも読んで比較してみたい。
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