きんゐかうし卿

モンスターズ・ゾーンのきんゐかうし卿のネタバレレビュー・内容・結末

モンスターズ・ゾーン(2012年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

 



『説明不足か、読解力不足、或いはその両方』

自宅にて鑑賞。日本劇場未公開作で原題"Nailbiter"。カンザスシティの空港へ向かう道中、足止めを喰らったウェルスヴィルで巻き込まれるソリッドシチュエーションサバイバル~とんでもない展開に至る。圧倒的な説明不足で、そもそもの設定や世界観の詰めが甘く、矛盾や破綻を孕んだ箇所が散見出来た。竜巻の描写に力が入っている反面、クリーチャーは既視感に溢れた一昔前のデザインでちんけで廉っぽかった。80数分の短い尺ながら冗長なシーンが多く、全篇に亘り、視点が定まらず、テンポも崩れっ放しである。待ち人が着くラストは以降へのブリッジにしか見えず、最後の最後迄諄い。40/100点。

・クライマックスでファーストカットがリピートされるもその後ダラダラと続き、更には本筋の後にも舞台を変え間延びしたシーケンスがあり、締りが悪い。「シャーマン家の記録」にあった“エドモンド・シャーマン”──雷に打たれて本性が覚醒したのか、或いは何かに変わってしまったのか、異変のきっかけを匂わせるもブツ切りで釈然としない。他にもこちらの読解力不足かと疑ってしまった箇所は枚挙に暇が無かった。思わせ振りな設定や展開が続くも舌足らずでひいては内容が薄く思え、詰め込み過ぎと云うよりも消化不良で、描かれない背景や物語の外側が見えてこない。細部を詰めず、試せるものは全て盛り込んでみた様な印象を受け、文法的に上手く纏まっていないが為、中途半端で在り来たりな出来である。

・ネタバレとして本作で描かれているのは、有名な『SF/ボディ・スナッチャー('78)』や『スペースインベーダー('86)』と云った乗っ取り系、すり替わり系と少しニュアンスが違う。他にも精神疾患の一種、カプグラ症候群について言及されていた『スナッチャーズ・フィーバー -喰われた町-('14)』が似ているがこれも違う。本作では住民が嵐の接近で変身する体質の様なものなのか、或いは何かをを境に置き換えられてしまったのか、全く説明が無い。主人公達を幽閉したのも餌としたかったのか、その理由も不明である。そして訪れるよそ者とは裏腹に妊婦を含む二人のみは襲わないと、見境が無い訳でもなく、全く判らない。

・冒頭、I.デンプシーの“ショーン”とのやり取りは何だったのか、最後迄この調子である。“ジェニファー・マグワイア”役のM.サリックスはR.ゴズリングに似た顔立ちだが、表情が乏しく、所作も下品に思えた。アル中を克服しようとするE.マッグレーンの“ジャネット・マグワイア”もキャラクター設定がブレてる感じで、演技も微妙。演者陣では知的な役どころ“アリス・マグワイア”のE.ボアソウ、この手のには欠かせない善良にも妖しくも見える“シャーマン”夫人のJ.アッペルが佳かった。

・地球の自転に対し、北半球では進行方向に対して右に作用する為、竜巻は反時計回りに、反対に南半球では左に作用し、竜巻は時計回りに95%以上の確率で回転すると云われている(コリオリ効果と呼ばれる作用に対する現象)。本作に登場する竜巻は漏れなく時計回りである。

・鑑賞日:2019年2月1日(金)