きんゐかうし卿

友罪のきんゐかうし卿のネタバレレビュー・内容・結末

友罪(2017年製作の映画)
2.8

このレビューはネタバレを含みます

 



『各人の逃れられないしがらみに由る贖罪と救済』


自宅(CS放送)で鑑賞。中学時代に親友を見殺しにしたと自らを責め続ける男、児童三人を轢き殺した息子を持つタクシー運転手、17年前(14歳)に神戸連続児童殺傷事件を思わせる大事件を起こした男、AV出演を強要された悪い男に附き纏われる女、更には家庭を省みないと非難する娘を持つ少年更生施設の女性職員と様々な過ちや原罪に因る自責の念に囚われる人々を多角的に描く。重いテーマを目一杯詰め込んだ割に二時間ちょっとの尺は欲張った分、舌っ足らずでやや物足りず、もっと掘り下げて欲しい箇所も有った。僅かな希望を抱かせるラストも唐突で微妙。55/100点。

・後半、(永山)瑛太演じる“鈴木秀人”が嘗て日本を震撼させた“少年A(青柳健太郎))”であると興味本位でレポートを書いた生田斗真の“益田純一”──幾ら以前の同僚である“杉本清美”の山本美月に唆されたとは云え、書いた事自体が彼にとっての大きな罪ではなかろうか。亦、週刊誌に無断掲載されたとは云え、結果的に町工場の同僚や同居する寮の連中に知れ渡る事となってしまう。更に部屋に籠もる“鈴木秀人”も覘きに来た“益田純一”を「全てボクが悪い」とニヤけ乍ら許すのではなく、殴り掛かる程激怒する展開の方が続くラストが活き、違った意味と味わいを残したと思われるが如何だろうか。

・一家離散をし、孤独により自らの責任を見詰め続ける佐藤浩市の“山内修司”、「家族を解散した原因を作ったお前自身が家族を作ってどうする」との問い掛けに“山内正人”の石田法嗣が返す「罪を犯した者は幸せになってはいけないのか」と云う言葉は、万人に重く圧し掛かる。遅れ乍ら駈け附けた結婚式当日、終始反対を繰り返す“山内修司”に同調する他人がおり、その人とも口論してしまうと云う展開があれば、より孤独が浮き彫りになったとも思うが、それでは救いが無さ過ぎるのかもしれない。孰れにしろ、業務中に横断歩道を渡る子供達を見守る彼のラストカットは情趣溢れた佳いシーンだと思う。

・青々とした原野に“唐木達也”を演じる忍成修吾は『リリイ・シュシュのすべて('01)』を想起した。尚、原作者によると、本作には明確なモデルとなった実在の事件は存在しないとの事。

・心に人知れず闇や不安を抱え、懺悔と自省の念に駆られる日々を過ごす人々中、最も共感出来、まともに思えたのは、一見捉え所の無い“鈴木秀人(本名:青柳健太郎)”役の(永山)瑛太だった。或る意味、不気味とさえ云える程の冷静さとペシミスティックな態度で考えが読み取りにくい役所は、嘗て萩原聖人がよく演じていた感がある。不幸な過去に縛られ続けるも健気で控えめな“藤沢美代子”を演じた夏帆、他作でも難しい役を熟し続ける彼女には今後も注目したい。そして寮の同居人で先輩格の“清水”の奥野瑛太の醒めた熱演も印象深い。

・鑑賞日:2019年12月29日(日)