よねっきー

ホーリー・モーターズのよねっきーのレビュー・感想・評価

ホーリー・モーターズ(2012年製作の映画)
4.0
カメラも観客もない俳優の一日。いや、映画になってる以上カメラはあるだろうし、おれという観客もいるわけだけど。「演じる」という矛盾を生きる人間についての話だ。

おれは近年のレオス・カラックスがあんまり好きじゃないかもしれん、と思った映画だった。『汚れた血』は若々しい荒さとか疾走感があって好きだけど、『ポーラX』なんかは音がうるせえだけの地獄みたいな映画(大好きな『山の焚火』と何故か二本立てで観せられたこともあり、大嫌い)だったし、50代に突入してもこの不可解な感じで撮り続けてるのは、なんだかあまりカッコよくないなあと思ってしまう。

芸術家独特の斜に構えた態度って、考えものだよなあ。アヴァンギャルドな作家性の監督でも、熱いタイプと冷めたタイプがいる気がして、こいつは後者。いたずらみたいな演出ひとつひとつに、あんまり愛を感じない。ぜんぜん屈折してたって良いと思うけど、あんまり頑固なままでは本当に良い映画は撮れないと思うんだよ。せめてもう少し、技法的な部分での成長とか、革新的な何かを見せて欲しかったな。もともとストーリーが面白いタイプの作家ではないだろうし。

映画史を自分なりの視点から回顧するような映画が撮りたかったのもまあ分かるんだが、コンテクストに甘えた作劇になっていることは否定できない。架空の俳優業を持ち出したことで意図がブレてる気もするし。リムジンたちが会話するラストショットだけはかわいくて好きでした。それが愛(ラブ)じゃん?
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