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ホーリー・モーターズのLudovicoMedのレビュー・感想・評価

ホーリー・モーターズ(2012年製作の映画)
4.0
ドニラヴァンとの結合の果てに、"千年女優"と化すレオスカラックス監督。

アレックス3部作がジュリエットビノシュとの破局に終わり、ポーラXで影武者ドニラヴァンと決別し、映画人生を引退したかに思えたレオスカラックスが、生み出した『千年女優in 1days』はまるでデヴィッドリンチが憑依したかのように、まるで見たこともないような、不思議で新鮮な映画スタイルであった。
全世界のシネフィルは、開いた口が塞がらなかったであろう、「これが、レオスカラックスか?」と自分も衝撃が走りました。

映画史初期のサイレントフィルムが映写され、レオスカラックスご本人登場がします。 そしてツインピークスのブラックロッジ(赤い部屋)を思わせるシュールな世界観から、映画館へとワープするカラックスは観客としてスクリーンを覗き込む。

とまあ、訳がわからなさすぎる冒頭だが、ここから先はいわゆる"映画内映画"。 ドニラヴァンが、千年女優さながら、様々な役柄をフラッシュモブ的なゲリラパフォーマンスを熟すショートストーリー仕立ての作品。

ただこれが単なるオムニバスに終わらず、合間のリムジンのシーンが、デヴィッドリンチみたいな奇々怪々さを醸し出し、そこから、まるで映画史を旅行しているかのような感覚に陥る。

映画黎明期から幕を開けたと思いきや、TOKYO!に出てたメルドになりきり、怪獣映画を演出。そしてアバターなんかで使われたモーションキャプチャーに、クライムムービーのワンシーン、ミュージカル映画、更に更に最っ高にカッコよすぎて、繰り返し観まくってしまったインターミッション(この場面は、超オススメです)。まで入ってくる、まさに映画史映画だ。

更に、"映画俳優"の人生が1日の走馬灯に圧縮された、今敏監督の千年女優的な俳優伝記としても観れる。
しかし、本作の場合、生涯かけてドニラヴァンに投影したレオスカラックス監督の"人生史"と"映画史"の結合がとんでもない有機反応を起こし、映画が我々に語りかけてくるのです。

あまりにもパーソナルすぎるプライベートシネマっぷりに、戸惑い、混乱しまくりました。
しかし、ただ難解なイメージを叩きつけるアート系映画とは違い、演者が役を演じるとは何か?、それを監督が撮影し、観客が鑑賞する。という構図をとことん分析した結果、『映画と人生について』の極地にたどり着いてしまった。

これこそ、新しいゴダールと呼ばれてたカラックスの究極のメタフィルムだろう。
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