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水深ゼロメートルからのLudovicoMedのレビュー・感想・評価

水深ゼロメートルから(2024年製作の映画)
1.4
《青春の味の無さ考察にもいまひとつ》

異様にタイトルセンスと山下敦弘監督ものとそれに見合うコンセプトに惹かれて足を運んだ。山下敦弘監督はかれこれ10年以上チェックしてなく、後になって賞賛されてる声を聞くパターンばかりでほとんど見逃していた。しかし『リンダ リンダ リンダ』の甘酸っぱ表現名手が『アルプススタンドのはしの方』的な二匹目のどじょう作品に仕上がってると言われればもう間違いない。と期待したが、堂々巡り&説教くさいの女子会系青春の一コマだけでお釣りが欲しくなる外れクジだった。いわゆる短編で十分だった系の作品なだけに文句がつけづらい案件となるが、登場人物が抱えるコンプレックス(ってほど大した悩みに思えなかったが)があまりに図式化されすぎで引いてしまった。

とある水の抜けたプールサイドに偶然集まった4人の女子生徒が他愛もない会話を繰り広げるなら内なる悩みのぶっちゃけトークに煮詰まっていくものだ。ただそこをピックアップするなら語られない内なる思いを観客にだけ上手く抽出し、登場人物個人が自己で折り合いをつける行動に胸を熱くさせるものと思う。本作では幕切れのとあるアクション以外全てを"恥ずかしさのむき出し"任せに内なる叫びをしてしまう。それがイコール等身大の青春と履き違えてる本作がまた、観る側に恥ずかしさをもたらしてしまうので勘弁してほしい。

『アルプススタンドのはしの方』は画面に映らない野球の試合の急展開が感情の変遷に影響を与える演出で上手く魅せていたが、本作は舞台立てからアングルから抜群に学園特有の瑞々しさを捉えてるだけに余計もどかしい。一発目のショットから一点透視図法で現れた主人公がプールサイドの左に移動していき性格伝わって秀逸!と思えたのに。フレームとプールの長方形がピッタリ合う、水の代わりに砂ぼこりの空間で対極方向にホウキをはく二人や、裸足生脚をしつこいくらい強調してるにも関わらずいやらしさがなく思春期の活発さに魅せれている。要は総じて陰日向の青春をクッキリ浮かび上がらせるのにそれが全く引き立たない会話劇が残念すぎた。SNS/スマホといったJK必須ツールが全く絡んでこない違和感も今っぽくないし、そのツールのおかげで今の10代ってもっと達観してるイメージなんだが、校則の存在意義とか気になる野球部と自分との関係とかわざわざ口に出す?
そしてやけにデリケートな話題に突入する映画に大丈夫かこれ、と心配しながら見てたが「その生理仮病なんじゃないの?」発言や女子同士だから大半の時間胡座かく様子は私(男性)の知らないリアルだった。
よって発育期の男女の変化に追いつけない戸惑いに話が収まる。
いずれにせよわざわざ先生の事情を物語る分、対比させ鬱憤の発散が出来る歳頃の未熟さ/尊さが描かれ感情より理性で接するようになった今の若者には珍しい目線であった。

また青春とは過半数以上が悔いを残しがちでだからこそ人生の思いを馳せる期間なので、リアルタイムじゃ実感できない。後になって耽れるものが青春となるので、無限に続く余地を含んで終わる映画の全体像までは良かったが、その反面わがままが全部理由付けてあり、解決する為のわがままだったのが陳腐な青春劇に見えて台無しだった。実は新手の課外授業なのでは?とか思った。
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