テイアム

アンチヴァイラルのテイアムのレビュー・感想・評価

アンチヴァイラル(2012年製作の映画)
3.5
白い看板、白い部屋、白い壁、白い調度品。そして主演ケイレブ・ランドリー・ジョーンズの病的な白い肌。異常なまでの白さの中で際立つ粘り気のあるどす黒い血液の色。
寒空の下で体温計を咥え、具合悪そうに息を吐く彼の虚ろな視線を写すシーンから白いキャンバス地にこれでもかと大きく映し出される、暗赤色を中心に配色しデザインされた『ANTIVIRAL』の巨大なフォント。僅か2,3分のアバンタイトルがこの物語の醸し出す不気味な雰囲気を表しており、この作品が好きか嫌いかはここまでで十分判断できそうです。
物語は、セレブへの熱狂的な心酔が緩やかに“ある一線”を超えつつある近未来のお話。好きなセレブが感染したウイルスを培養し、同じ疾患に罹りたいファンが金を出して身体に取り込む。またセレブのDNAから創り出された擬似肉に人々が殺到し、買い漁り、食す。劇中にて主人公が疑問を呈すとおり、カニバリズムへの抵抗感や禁忌の境界は限りなく曖昧なものとなっています。
主人公は、あるセレブが感染した新しいウイルスを横流ししようと自らに直接感染させたある企業の技術者で、彼は謎の幻覚症状と身体の異変に苦しめられ、そのウイルスの発症原因を突き止めようと奔走し、思わぬ方向へ展開していきます。
始終、白に覆い尽くされた画面でありながら、最後まで静かで暗くて美しい。ストーリーよりもアートとして感覚で味わう方が楽しめると思いました。

既に現実でもセレブのDNAを混在させた肉を販売しようとする動きがある(もう実売されてる?) ようですが、人間最大の禁忌事項、カニバリズムはもはやタブーではなく、嗜好品として消費される時代に入っているのかもしれませんね。
この異常とも言える時代の潮流に人の倫理観がどこまで抵抗できるか、個人的に興味をそそられるところです。