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水の話のpikaのレビュー・感想・評価

水の話(1958年製作の映画)
3.5
ゴダールとトリュフォーが唯一共同で監督をした短編作品。
パリで洪水が起きていると知った2人が「これをネタに映画を撮ろう!」と即興で撮影。
「こんなん無理だわ」と、さじを投げたトリュフォーの残した映像に、ゴダールが「やれやれだぜ」とナレーションを付けて編集した。

そのためか、共同監督と言うよりゴダール色に染め上げられている。
始まって数秒で「あ、ゴダールだ」と気づく音楽の使い方、全編を覆う粋な台詞。
個人的にゴダールに対して「好きなんだけど、好きだと認めるのが悔しくてニクイあんちくしょう」という感情を持っているのだが、今作は閉口してしまうほど心にズバッと刻印される、ニクらしいほどに魅力的なナレーションにまた魅せられた。

「話が脱線したと思うでしょう?脱線によって主題を語るの。ちょうど洪水の中を走る車が回り道をしなければならないように」
「言葉だけが自由な国、フランス。パリに行くのも自由よ」

「普段は映像よりも台詞重視だけど、ここでは風景に負けた」

おいおいおいおい。
ゴダールの生み出す言葉に、どうしようもなく心を揺さぶられてしまう。
映像がまた絶妙な切り口で言葉と繋がり、意図や意味ではなく映画に心が覆われてしまう。
全くもって直接的なことはせず、関係なさそうなシーンの羅列、まさに「脱線によって主題を語る」といえる、ラストの着地がこれまでの全てを総括しているまとまりが凄い。

チキショー!これ好きだ。
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