くりふ

闇・光・闇のくりふのレビュー・感想・評価

闇・光・闇(1989年製作の映画)
4.5
【みごとな粘土落語】

シュルレアリスムの映像巨人、ヤン・シュヴァンクマイエルについても、ぼちぼち投稿していこうかと思います。

強烈で複雑な短編を作り続けた先で、本作は、もうシンプルでいいや!と、ある到達点までイッちゃった感があります。すごく解りやすいし、言いたいこと…てか感じさせたいことが、直球で沁みわたる。

ある小さな部屋の中に、“手”と“眼”が転がってはじまる“創自記”。自分と世界、バランスとジレンマについて、人智で極められるのはこんなモンだよ、と笑い飛ばしている。

粘土をつかうことで、相変わらず触感が迫ってくるし、ぬめり、と実物の内蔵投入するのは、やはりこの人ならでは。でも、すべてにユーモアが勝っていて、名人の落語を、映像で叩きつけられるような思い。

物語のすべてを、“手”が主導するのがおもしろい。これはシュヴァンクマイエル自身の手でもあるのでしょう。彼は撮るより創る人だし。

要が“ティンコ”であるのがスバラシイ!それが収まるべきトコに収まると、一気に世界は加速する…けど、それは進化なのか?…いや、珍化なのか!

全作、見直さないとわからないが、短編でひとつ選べと言われたら、やっぱコレかなあ。

<2022.9.5記>
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