【みごとな粘土落語】
シュルレアリスムの映像巨人、ヤン・シュヴァンクマイエルについても、ぼちぼち投稿していこうかと思います。
強烈で複雑な短編を作り続けた先で、本作は、もうシンプルでいいや!と、ある到達点までイッちゃった感があります。すごく解りやすいし、言いたいこと…てか感じさせたいことが、直球で沁みわたる。
ある小さな部屋の中に、“手”と“眼”が転がってはじまる“創自記”。自分と世界、バランスとジレンマについて、人智で極められるのはこんなモンだよ、と笑い飛ばしている。
粘土をつかうことで、相変わらず触感が迫ってくるし、ぬめり、と実物の内蔵投入するのは、やはりこの人ならでは。でも、すべてにユーモアが勝っていて、名人の落語を、映像で叩きつけられるような思い。
物語のすべてを、“手”が主導するのがおもしろい。これはシュヴァンクマイエル自身の手でもあるのでしょう。彼は撮るより創る人だし。
要が“ティンコ”であるのがスバラシイ!それが収まるべきトコに収まると、一気に世界は加速する…けど、それは進化なのか?…いや、珍化なのか!
全作、見直さないとわからないが、短編でひとつ選べと言われたら、やっぱコレかなあ。
<2022.9.5記>