TAK44マグナム

ウォールフラワーのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

ウォールフラワー(2012年製作の映画)
4.7
誰にでも傷はある。
隠しても隠さなくてもいい。
大切なのは、隠したくなくなった時に聞いてくれる誰かが、すぐ側にいてくれるかどうかなんだ。
話を聞いたあと、抱きしめてくれる誰かと出会うことなんだ。


ああ、そうか。
この映画は、登場人物たちと同じように悩む、観ている側の人々に向けたメッセージなんですね。
主人公であるチャーリーが手紙を書いている相手。
彼が「トモダチ」と称している者、それはまさしく我々。
青春時代、いやそれだけでなく充分に年齢を重ねてしまったあとでも何かしら悩みを抱えているのが当たり前だと思うのですが、本作はそんな我々に「でも乗り越えられるんだよ」と、まるで手をとるように登場人物たちの傷つきながらも前を向いてゆく姿をみせることによって光を与えてくれます。

「美女と野獣」の脚本でも知られるスティーブン・チョボスキーが原作者でもあり、脚本と監督を手掛けておりまして、想像するに彼自身、チャーリーのような青春時代をおくり、家族や友人たちと過ごす中で悩みを克服してきた過去があったうえでの原作小説であり、映画なのではないかなと思いました。


あるトラウマを抱えるチャーリー役は「フューリー」のローガン・ラーマン。
メチャ巧い。
ルックスからして適役というのもあるでしょうが、スクールカーストの底辺にいそうだし、なにより童貞臭が重要な役なのでピッタリと言えます。
口下手で繊細そうな雰囲気も上々。
コミュ障だけども、誰よりも友達を欲しているあの姿、分かる。
痛いほどよく分かります。
最初にパトリックに声をかけるシーンからして最高で、些細なことだけども凄く勇気がいるんだというのがこれ以上ないぐらいな伝わってきて、「うんうん、頑張った。よくやったな!」と早くも涙が出そうになってしまった。

パトリック役は「ジャスティスリーグ」でフラッシュを演じているエズラ・ミラー。
彼もグッジョブだなぁ。
お調子者の仲間思いで、実はゲイという複雑な役どころなのだけれども、まったく嫌味がなくスマート。
中性的でスタイルがとても映え、ロッキーホラーショーの場面なんてもうアゲアゲでしょう。
終盤の、心情を吐露するところもかなりグッときましたね。

パトリックの義理の妹であり、チャーリーの憧れの君になるのがサム。演じるは言わずと知れたエマ・ワトソンです。
とんでもなくキュートで、本当に美しい。ショートカットも似合う似合う。
彼女の演技もとんでもなくハッとさせられっぱなしでしたが、クリスマスのプレゼント発表会での、チャーリーへの気持ちに気付くところなんてズキュンときましたね!
ベタと言えばベタな演技かもしれませんが、単純に胸がキュンとなった瞬間の女子というものをあれだけ的確に表現できるなんて大した女優さんですよ。
こちらまでウキウキしてしまいましたもの。

他に、国語教師の役で「アントマン」のポール・ラッドが出演していますが、人を導ける理想的な教師像が眩かったですね。

総じて、キャスト陣は鉄壁。
あんな家族や仲間がいたらなぁ・・・と、羨ましくなってしまいます。

しかし、真実と挑戦ゲームってどれだけスタンダードなんでしょうかね。
ほんと、色々な映画でお目にかかるゲームですよね。
アメリカ人は、みんなやるのか?
あと、クリスマスのムード。
ああいうの憧れます。

様々な出来事があって、それらを経験値とすることで成長してゆくチャーリーたち。
本作の特徴として、チャーリーの仲間たちは上級生ばかりというのが挙げられます。
つまり、みんなが卒業したらチャーリーはまた一人ぼっちなんですね。
その辛さからか、チャーリーの精神がトラウマに侵食されてしまい、さあどうする?というラストへかけての展開は些か急ぎ足のような気もしないでもないですけれど、そこまでを丹念に描いていますし、なによりデヴィット・ボウイが流れる中でのラストの気持ちよすぎる疾走のハンパない爽快感が最高すぎるじゃないですか!
エマ・ワトソンと一緒に叫びたい!

映画でのキスシーンって、それこそ無限に感じるほどたくさんありますが、ベストテンに入るぐらい素敵な、それでいてさりげないキスシーンが余韻となって、エンドロール中ずっとウルウルと涙腺が緩んでおりました。

独りって確かに自由なんですよね。でも、鏡やモニターに向かって独白するだけの毎日はたぶんきっと味気ない。
そんな悶々とした時にオススメな良作です。
かなり深く突き刺さりました。


僕だってヒーローになれた。
君だってなれるはずだよ。
勇気を出して、気持ちを伝えればいいんだ。
少しずつでも近づけば、きっと誰かが気付いてくれる。
君は壁の花なんかじゃない。



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