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言の葉の庭のearlgreyのレビュー・感想・評価

言の葉の庭(2013年製作の映画)
3.0
 ユキノが「靴なしでも歩けるように練習していた」と言えば、それは“タカオがいなくても生きていける自分であらねばならない”という意思の表明で、
 タカオが「靴職人になるなんて、そんな想いなんてどうせ叶いっこないって思っていたんだろ」と言えば、それは“年の離れた教師のユキノに恋をしても受け入れる気なんてなかったんだ”という失望をあらわしている。
(台詞はうろ覚え)
 ふたりがぶつけ合う少ない言葉に、互いへの気持ちと、依存と自立の合間で自律しようとする切実さが満ちていた。
 最近の新海誠作品と比べて、より文学的というか、メジャーじゃなかったからこそできる人と人との交流がよかった。

 ただ、ユキノの職が明らかになってからはちょっと、観ていて気持ちが冷めたかな。
 できればユキノは、学校現場というタカオのいる世界とはまったく無関係の、彼にはどうしたって関与できないところで居場所を失っていてほしかった。
 大きすぎず小さすぎない会社に属するひとりの会社員で、極端なブラック企業だとかひどい人間関係というわけではなく、でもその場所で個人的な心の持って行き様を見失うような、大人のありふれた苦悶。
 そういう背景であった方が、タカオとユキノの関係性が際立ったのではないだろうか。
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