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バットマンのearlgreyのレビュー・感想・評価

バットマン(1989年製作の映画)
3.5
 ジョーカーは精神に異常をきたした悪役だが、相手を手にかける方法には化学×芸術の生き様が感じられる。
 掌に仕込んだ装置で握手して感電死させる、羽ペンを首筋に投げて刺す、生活用品として流通させた毒物で大衆を無差別に笑い死にさせる。挙句の果てには現金ばら撒きからの、ポップな巨大バルーンで街を毒ガスで染め上げる。
 そういえば、ジャックというマフィアの二番手男が死んでジョーカーに生まれ直したのも、銃撃というよりは化学会社の薬品の液槽だった。

 不謹慎だが彼の人殺しには、悪なりの美学を感じる。
 漂白された引き攣り笑顔のジョーカーが、顔のただれた愛人・アリシアを連れて、ヒロイン・ヴィッキーに「生きた芸術」の演説をぶつ場面は引き込まれた。

 バットマンの方も短い尺で、資産家との二重生活、執事・アルフレッドとの絆、両親を亡くした復讐という動機、ヒロインに打ち明けるかどうかの葛藤と、無理なく共感を寄せられるように描かれている。
 ヒーローなのにイケイケじゃなくて影があるのがいいな。
 シールド機能のある車と飛行機は外装はぬるっとマットな感じなのに、徹底的に武装されていてメカメカしくてかっこいい。

 アメコミもヒーローものもほぼ初めてだったが、予想以上に面白かった。アクションと勧善懲悪で終わらず、バットマンとジョーカー双方に人間くささがあったからだと思う。
 「淡い月明かりの下で悪魔と踊ったことはあるか」に始まり、「おんどりが現れたぞ」「イカしたアンヨ」など、今となっては問題になりそうな、でもキャラ立ちしたアーティスティックな台詞の数々も魅力的。


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 漫画『まじっく快斗』が好きなのだが、バットマンからかなり影響を受けていると感じた。
 ワイヤー銃などのギミック、高所に立つマントのシルエット、アジトに隠された衣装、親亡き後の後見役で親の旧友でもある執事、敵はマフィアや狂った研究員、追われる身の正義、ヒロインに見せる顔と二重生活。
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