OASIS

わたしはロランスのOASISのレビュー・感想・評価

わたしはロランス(2012年製作の映画)
4.0
国語教師であるロランスは、誕生日を迎えた日に恋人フレッドに「本当は女に生まれたかった」と告白をする。
その事実をフレッドはなかなか受け入れる事が出来なかったが、彼を失いたくない一心で、様々なアドバイスを行うようになるが・・・という話。

この映画を一言で表すなら、正に「スペシャル」という事に尽きる。
ロランスにとって「普通」な事はフレッドにとって途轍もなく「スペシャル」な事であるし、それを受け入れる事は「普通」であるフレッドには到底無理な話。
ロランスが普通に接しようとすればする程、彼と空間を共にするフレッドには好機の視線が浴びせ続けられる。
それによって両者に生じるズレは「スペシャル」な関係だからこその物であるし、だからこそ徹して普通であろうとするフレッドには男目線からしても感情移入してしまった。

彼が彼女の望むものを全て与えようとしても、普通の暮らしだけは絶対に手に入れる事が出来ない。
そんなどうしようも無いフレッドの感情が「土曜日のランチタイム」で爆発する瞬間はこの映画屈指の名場面であると思うし、劇中でも度々登場するマイノリティなものに対して向けられる視線の残酷さが二人の生きる世界の希望の少なさも表している。
もしも性同一性障害を持ったパートナーが自分にも居たとしたら、やはり今までの様に愛する事は出来ないだろう。

生き辛く暗い世界の中で、一際目を引くのは色彩豊かな映像と音楽。
空から降る雪、天井から落ちてくる大量の水、空から降り注ぐ極彩色の服、枯れた葉など、とにかく彼らの周りには周囲との関係を絶つ様に、二人の距離を遠ざけるかの様に空から大量の物が降る。その美しさや、ロランスが自分の存在を強く周りに主張した瞬間に流れる「Fade To Gray」などセリフでなく映像で語る場面のセンスがずば抜けて素晴らしかった。
グザヴィエ・ドラン恐るべし。

とはいえ、3時間という長さはどうしても感じてしまう映画でした。
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