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雲のように風のようにのtakのレビュー・感想・評価

雲のように風のように(1990年製作の映画)
3.7
もともとは日本テレビのスペシャル番組として、1990年に放送されたアニメーション(後にイベントで劇場公開)。「うる星やつら」など80年代に人気作を手がけてきたスタジオぴえろ作品。スタッフには、後にスタジオジブリで活躍するアニメーターが数多く参加、マッドハウスや京都アニメーションも関わっている。30年以上前の作品だが、日本のアニメーションの歴史を知る上でも、鑑賞して損はない佳作。

中国の架空の国で皇帝が崩御。次の皇帝となるのは皇太子だが、皇后は皇太子を亡き者にして幼い自分の子を皇帝にしようと企てる。一方で宦官たちは妃となる娘を連れてきて手柄をたてようと、各地に妃候補を探しに走った。田舎娘の銀河は、妃になって後宮に入れば三食昼寝付きで女子でも学問をすることができると聞いて応募し、宦官とともに都へ向かう。育ちがいい訳ではないが、正直な物言いと探究心がある銀河。後宮に時折現れるコリューンと名乗る人物と親しくなり、コリューンが刺客に襲われたのを救う。やがて、ライバルを抑えて銀河は正妃の座を射止める。新皇帝にも信頼される関係になるが、そこへ反乱軍の蜂起が起こる。

わずか80分余のアニメーションだが、ドラマティックな物語と多彩なキャラクターで満足できる。失われていく王朝を守ろうとする者、見捨てて去っていく者、その時世にロマンを求めて剣を手にする者。大人たちは乱世の渦の中で右往左往する。そこに巻き込まれた少女が成長し、妃として立ち向かおうとする真っ直ぐな気持ちが感動的。後半はかなりヘヴィーでビターな展開が待っている。

後宮が舞台だけに、原作はもっと大人向けのエピソードもあるのだろうが、子供の鑑賞を前提とした作品だけにナレーションでサラッと触れる程度にしている。追い詰められた皇帝を「私もう子供じゃない!」と言って抱きしめるクライマックスと、その後の脱出劇は原作だともっと深いのだろうな。

原作は酒見賢一のファンタジーノベル「後宮小説」。キャラデザインが「魔女の宅急便」のキキを思わせる。佐野量子(かなり好きでした)は確かに棒読みだけど、ヒロインの垢抜けない様子や不器用さが感じられて、決して悪くない(ひいき目です)。
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