松原慶太

野獣死すべしの松原慶太のレビュー・感想・評価

野獣死すべし(1980年製作の映画)
3.9
仲代達矢版「野獣死すべし」と比較して観賞。表面的にはクラシック音楽好きの真面目な青年・伊達が、犯罪を重ねていくすがたを描いている。

かなり破綻した構成の映画で、中盤までは、この主人公が誰なのか、何をしているのか、まったく分らない。伊達のキャラクターも、ストーリー自体も、原作を大きく改変している。

あきらかにバランスを欠いた冗長な場面も多く(たとえば冒頭の乱闘シーン、そのあと伊達が部屋でレコードを聴いているシーン)、このままだと相当な失敗作になるなと思ったのだけれど、中盤以降、物語の骨格が見え出してきてからは、がぜん面白くなる。

伊達というキャラクターの背景については、仲代版と異なり説明的な描写がすくないが、伊達が以前カメラマンをやっていた、戦場のようすがフラッシュバックで挿入されるあたりから、おそらくベトナムかアフガンあたりの惨禍を目の当たりにすることで、この男は頭が変になってしまったのだな、、ということがわかる。

とにかく冗長な場面も多いのだが、その反面、邦画史に残るような名場面もいくつかあり、それゆえに傑作といわざるを得ない出来となっている。小林麻美、室田日出男、リップ・バン・ウィンクル。
松原慶太

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