TAK44マグナム

野獣死すべしのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

野獣死すべし(1980年製作の映画)
3.2
主演・松田優作。

原作は大藪春彦のハードボイルド小説。

記者として戦場の現実を目の当たりにした伊達邦彦は、帰国後、その精神を確実に蝕まれていた。
平穏な日本での現実から剥離した彼は、数々の凶行にはしることとなる。
その運命の果てる末路とはー?

自身が考える完璧な役作りのために奥歯を抜き、更には足を切って身長を低くしようとしていたエピソードは、あまりにも有名。
原作はおろか、当初の脚本とも違う世界観は独自の優作イズムからくるものであり、村川監督とも度々、衝突したみたいです。
原作小説から想像するようなハードボイルド・アクションではなく、戦場の狂気に触れた男の常軌を逸した行動を追う、言うなれば松田優作流のドラッグムービーの様相を呈しています。

同じ大藪原作の「蘇る金狼」のような映画だと思って観ると痛い目にあうこと必至。
「蘇る金狼」もかなり原作をアレンジしていますが、本作は抽象的なイメージのみで描かれた場面も多く、原作、監督、主演が同じと言っても似て非なる、まったく異質な雰囲気をもつ映画となっており、それは優作自身の狙いでもあったようです。

個人的には、「映画は娯楽」というスタンスなので、全体的に冗長であり、あまりにも難解なラストへの流れからして乗りきれない自分がいるのですが、「面白い」や「詰まらない」といった単純な指標を超えたところにある、松田優作という一人の役者の存在感が極まった映画なのだと思いました。


huluにて