Bellissima

ばしゃ馬さんとビッグマウスのBellissimaのレビュー・感想・評価

5.0
『ばしゃ馬さんとビッグマウス』@新宿バルト9

どうしようもなく辛いけど暖かな眼差しが染みる秀作。大多数の人間が追い求めては掴めず手放していく夢。夢の底に横たわる整理のつけようのない重く切ない残酷さを透かし見せながら愛しさと笑いをすらっと浮かばせる。複雑な混交が実にお見事。夢諦めた者達へ送る鎮魂歌。

主役2人の恋愛関係や傷のなめ合いに話を反らさずじっくりと「抱いてしまった夢とどう向き合うのか」一点に焦点を絞る。希望を装う事よりむしろ誠実さを感じる。コメディの名手が笑いから一歩身を引き苦み走るが湿らずドライなおかしみをもって小気味よい作品となった。

吉田監督はテンポで見せる事に特化せずシーンが少々長くても焦らないでじっくりと描いていて逃げてない。こうゆう作風は凄く好感が持てるなぁ。観客を信じてるし自分に自身がないとあーゆう作りって怖くて出来ないよね。

当代ぐずぐず泣き女をやらせたら右に出るもんなし麻生久美子グレイト。巧い!彼女なしにはこの作品なかったでしょう。シリアスとコミカルのさじ加減の妙。立ち上る叙情に笑わされつつホロリとさせられ堪らないです。好き。

安田章大君の事は全然知らなくて余計なノイズ一切ナシ見たので前半の彼がムカついてしょうがなかったんだけど最後は「いい奴だなぁ」と好感度大。演技に囚われておらず且つ素でもない。演技のありようが自然な説得力をもって体感していて感心しました。

岡田義徳さん良い役者になったなぁ。平易な言葉とくっきりとした会話にすっかり中堅の安定感を感じました。あと主役2人の母親の絶妙なキャスティングは見てのお楽しみ。ファミレスのウエイトレス、自転車のおばちゃん、ワンさんなど監督のイイ顔コレクション放出!
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