えくえあ

V/H/S シンドロームのえくえあのレビュー・感想・評価

V/H/S シンドローム(2013年製作の映画)
3.7
ブレアウィッチプロジェクトに端を発し、数多くの監督が試みたPOV、ファウンド・フッテージの手法の研究をまとめたアイディア箱的なオムニバス
ストーリーはほぼなく、どちらかといえばPOVという表現の可能性を楽しむかなりマニアックな映画ですね

本作は6つの作品のオムニバスになっており、屋敷に忍び込んでビデオテープを回収するという依頼を受けた3人の若者たちが忍び込むという「Tape56」という作品を主軸とし、この作中で再生される件のビデオテープの中身として「Amateur Night」「Second Honeymoon」「Tuesday The 17th」「The Sick Thing that Happened to Emily when She Was Younger」「10/31/98」の5つの作品が流れるという入れ子の構成になっています

どの作品もなかなか工夫されていて好きなんですが、特に「Second Honeymoon」と「The Sick Thing that Happened to Emily when She Was Younger」はよかった

「Second Honeymoon」は新婚旅行に来たカップルが1台のカメラを共有して撮影している設定で、映像中にもカメラを手渡す描写があり撮影者が誰であるかを意識させるような映像になっている
そんな撮影スタイルの中で夜中に二人が寝静まったときに何者かによる撮影が開始されるのだ
さらには鏡というアイテムを使って撮影者にさらにフォーカスしてゆき予想外のラストを迎える
撮影者というPOV独自の構造をうまく使った作品となっていて非常におもしろい

「The Sick Thing that Happened to Emily when She Was Younger」はビデオ通話が舞台になっており、撮影者本人と我々視聴者の間に通話相手という存在が介在することで温度差をやわらげてくれているような感じ
さらにはそんな視聴者と同じ視点を共有してくれている通話相手をうまく利用したラストには完全に意表を突かれます
ただちょっと突飛過ぎる気もしますけどね

ほかの作品に関してもメガネ型カメラを使ったり、カメラにしか映らない殺人鬼が出てきたり、勢いと臨場感がすごくよかったりと、POVを生かした工夫に満ちた作品ばかりです(語り部的ポジションのTape56こそ凡庸でしたが...)
POVというジャンルについてとても勉強になりますね
グロ描写もなかなか強烈だし画面もかなり揺れるので露骨に評価も割れてしますが、私は好きですね

次はV/H/Sネクストレベルです
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