せんきち

パトリオット・デイのせんきちのレビュー・感想・評価

パトリオット・デイ(2016年製作の映画)
3.9
ピーター・バーグ最高傑作。


2013年に起きたボストンマラソン爆弾テロ事件の発生から解決までを描く。

ポスターにはでかでかと主役のマーク・ウォルバーグが出ているが、彼が大活躍する映画ではない。


序盤ボストンマラソンに参加する人々、ボストン警察の人々、FBI、テロリスト、後にテロリストに拉致される人達の日常が描かれる。本作は彼ら全員が主人公の群集劇になっているのだ。


テロ発生後の被害者の救助→ボストン警察が現場の証拠品を総ざらい→FBIが仕切って捜査本部を設置→倉庫に証拠品を置いて爆発現場を再現→押収した監視カメラと照合して爆破犯を割り出す



この辺のスピーディーさが気持ちいい。職人監督の上手さよ。『シン・ゴジラ』の巨災対が設置されるシーンを思い出してしまった。


テロリストが判明してからの大銃撃戦はいささか盛り過ぎ(マイケル・ベイ作品並みに爆発してた)と思うが、住宅地で住民が警官に「小さいけどハンマーだ!これであいつの頭かち割ってくれ!」って渡すシーンは笑った。いくら何でも使えないだろと。でも、ここ実話っぽくて好き。


ボストンから逃げてニューヨークでテロを起こそうとする犯人達をFBI、ボストン警察、ボストン市民が一丸となって食い止める展開は分かっていても熱くなる。しかも、ラストの野球親善試合と、ボストンマラソンの再開は泣けてくる。ベタではあるが。


『パトリオット・デイ』という題からして能天気なアメリカ万歳映画を想像してる人もいるだろうが、そうではない。ちゃんとテロリスト達に「元はといえば、あんたらが仕掛けた戦争だろう」という台詞を言わせてる。だからと言って、こんな事が正当化できる訳ないという事は映画を観れば明らかな事だ。


何より驚いたのはマーク・ウォルバーグに「テロに勝てるのは愛だ」というベタな台詞の後に「テロでは自分達を変える事はできない。悪に負ける事はないんだ」という趣旨の台詞を言わせてることだ。明らか保守派、共和党寄りのピーター・バーグでさえテロに勝利すると安直なことは言わないんだと。


隠れた傑作『キングダム 見えざる敵』のラストで復讐の連鎖の恐怖を描いたピーター・バーグなので、バカな事は言わないと思ったけども。『ローン・サバイバー』『バーニング・オーシャン』『パトリオット・デイ』と実録三部作をやったけど、今までの集大成みたいな映画だった。ここまでやってくれたら文句は言わない。基本大まじめでケレン味に欠ける点はあるが、それが観たければ『バトルシップ』を観ればいいのだ。

客は入ってないのが勿体ない作品なので是非劇場で観て欲しい。ピーター・バーグはもっと評価されて欲しいなあ。
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