真田ピロシキ

チワワは見ていた ポルノ女優と未亡人の秘密の真田ピロシキのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

『タンジェリン』や『フロリダプロジェクト』のショーン・ベイカー監督作。

ポルノ女優のジェーンがガレージセールで買った魔法瓶に大金が入っており売り主の老婦人セイディーに返そうとするも返品不可と突っぱねられて返せないままにタイミングを逃してしまい、着服するのは良心が咎めるので偶然を装って交流を深めていくストーリー。この2人の関係を歳の離れた友情と言ってしまうのは簡単だけれど、嘘を媒介にした始まりだけに事は複雑。ポルノという嘘を売る仕事なのも意味深である。

セイディーは最初の内はジェーンの親切を詐欺師と警戒したり(ある意味当たってるんだが)、スーパーで送迎の車を待てずに徒歩で帰ろうとしたりと非常に人間不信な所がある。そんなセイディーにジェーンと同居していて仲違いしたメリッサが「アイツはアンタの金を取った罪悪感から親切にしてただけよ」とぶちまける。この後に取った行動が一緒にパリ旅行へ行く前に夫の墓に寄ってジェーンに花を供えさせるというもの。そこでジェーンは知ることになる。子供はいなかったと言ってたはずなのに死んだ娘がいた事に。自分はこれでやっと自分自身の事を打ち明けられる程ジェーンの事を信頼したと同時に、自分の嘘を明かした事で嘘をつかれてた事も許してると表明した、本当の意味での友情を築けたのだと思った。しかしラストシーンの解釈読むと実は金のことは最初から知っていたというのもありハッキリしない。

社会的弱者が描かれるショーン・ベイカー監督作品であるが本作のジェーンは何かと搾取される仕事ではあるもののポルノ女優としては登り調子で、セイディーもギャンブラーだった夫の遺した金で不自由はしていないと言ってて後の作品の登場人物よりは恵まれているように見える。しかしセイディーの言ってる事は額面通り受け取れないので、作中の慎ましい生活を見るに実際はカツカツだったのかもしれない。だとしたら大金を入れたままの魔法瓶を売るなんて考えにくく知ってて売りに出したという方が納得いくような気がしてラストシーンの意味は全く変わる。何でそんな事をしたのかは正直分からなかった。直球のヒューマンドラマに見えて様々な嘘を含んだサスペンスフルな所があり安心しては見ていられない。邦題のチワワは見ていたはともかく、未亡人の秘密という所では的を射たタイトルつけれてると思う。青春映画になりそうなエモい光の映像美と重い人間心理のギャップ。この頃から既にショーン・ベイカー監督の作風は確立されている。