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ハンナ・アーレントのkojikojiのレビュー・感想・評価

ハンナ・アーレント(2012年製作の映画)
3.9
思考を止めた時、人は善悪の判断もできなくなり、人間でなくなる。

この言葉を言ったハンナ・アーレントはドイツ出身のアメリカの政治哲学者、思想家である。
ヤスパース、ハイデカーと交流がある。この映画の中では最後の方でハイデカーと恋仲だったことも知らされる。

ユダヤ人である。フランスで収容の経験がある。アメリカへ亡命し、1951年「全体主義の起源」を著す。この時期、なぜそれが起こり、なぜ誰も抑止できなかったのかをといていた。この映画の前の時代、ハンナは「リトル・ロック事件にかかる考察」という論文を発表し、相当のバッシングを受けている。
このバッシングにも彼女は絶対に持論を曲げない強い女性だったらしい。

因みに、このバッシングの内容も結構面白いので興味がある方は本を読んでみてほしい。リトルロック事件は、何やら「タイタンズを忘れない」を思い出させる。関係はないのだが。

この映画は1960年代初頭から始まる。
大学教授で多忙な日々を送っていた、ハンナ・アーレント(バルバラ・スコヴァ)。
ある日、多くのユダヤ人を強制収容所に送ったアドルフ・アイヒマンの裁判がイスラエルで開かれることを聞きつける。ニュルンベルク裁判に立ち会えなかったことから、この裁判にはどうしても裁判に立ち合いたいと考え、「ザ・ニューヨーカー」に話をもち込み了承を得る。
ところがこのレポートで激しいバッシングを受けることになる。
友人達も彼女から離れていくが、反論をしない。
大学は職を辞するよう彼女に迫るが、あなた方はわかっていないと突っぱねる。
そしてこの映画の最大の見せ場、生徒が満員に膨れ上がった教室で彼女が反論を始める。
何を彼女が語るのか、是非考えながら聴いて頂きたい。

映画自体は最初から最後まで彼女の思考を追う。いろんな人と議論する。収容所での生活やそこからの脱出、亡命、アメリカでの苦労など、伝記を読むと波瀾万丈のようだが、ちらっとそれは匂わせるだけ、特別物語があるわけではない。

それでも、彼女の思考を追っていくだけで映画は相当面白いから不思議だ。

また違った視点からのナチ映画だ。

No.1506 2023-538
2012年 ドイツ🇩🇪映画
監督:マルガレーテ・フォン・トロッタ
脚本:マルガレーテ・フォン・トロッタ
パメラ・カッツ(英語版)
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