ブタブタ

リアリティのダンスのブタブタのネタバレレビュー・内容・結末

リアリティのダンス(2013年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

サーカスと見世物小屋。
寺山修司もホドロフスキーも自身が子供の頃におそらくは実際に見たサーカスの興行と見世物小屋の原体験を芝居や映画で再現しようとしているのか、それは記憶の中の現実ではない想い出の世界の映像化なのだろうし、これもまた監督自身の人生を振り返る映画。

極彩色のサーカスやモノクロの書割の人々や四肢を欠損した傷痍軍人、小人らフリークス、ホドロフスキーの才能は少しも衰えていないし色褪せてないと思いたいのですが、こういう自らの人生を総括する映画を見せられてしまうとホドロフスキーも自らの人生の幕引きに入ってしまったのだろうかと思いたくは無いのですが、そう思ってしまいます。

北野武監督が「どんな天才でも肉体だけでなく才能も衰える。(晩年の)黒澤明監督に又『七人の侍』みたいな映画を撮れと言うのは無理」と言っていたのを思い出したのですが、やはり今のホドロフスキー監督に『エル・トポ』の続編や制作中止になってしまった『kingshot』の様な壮絶な血塗れアクション映画(因みに『kingshot』はホドロフスキー監督によると「形而上的悪漢映画(メタフィジカルギャングムーヴィー)だそうですが)はもう撮れないのでしょうか。
次回作の予定はリアリティのダンスの続編との事らしいので。
ホドロフスキーの新作が見られるだけでも喜ぶべき事は分かっているのですが。

少年ホドロフスキーの父親を演じたブロンティス・ホドロフスキーは『DUNE』で主人公ポウル・アトレイデを演じる筈でポウルが戦闘教官ダンカン・アイダホに戦闘訓練を受けた様に実際にマーシャルアーツのチャンピオンに格闘戦闘術を習いメンタート(DUNEに登場する人間コンピュータ)の様な思想家に哲学を学んだりしたと言う当時の体験が『ホドロフスキーのDUNE』で語られていました。
実現しなかったDUNEが時を経て、
主役のブロンティスは主人公の父・レト公爵にあたる役に、邪悪な一族・ハルコネンが支配する惑星アラキスはナチスが支配する軍事政権下のチリと言う暗い政治状況に、少年ホドロフスキーが体験する試練や幻覚や地元消防団への入団儀式等の通過儀礼はポウルが超人間クイサッツ・ハデラッハになる過程の数々の試練に、すなわち様々な体験を経て少年ホドロフスキーが現在のホドロフスキーになった、クイサッツ・ハデラッハが時空間を超える様に未来(現在)のホドロフスキーと少年ホドロフスキーが出逢う等々、父親との関係を含め『リアリティのダンス』は形を変えた『ホドロフスキーのDUNE』でもあるのかなと、あくまでもこじつけですが。

半自伝的自叙伝と言うフィクションで幻想のドキュメンタリー。
登場人物達がモノクロの書割になり立つ中に紅白の制服を着た少年ホドロフスキーも立っていて現在のホドロフスキーが去っていくラストシーン、これもまた全部芝居。

チリを旅立ったホドロフスキーはフランスに行くのですが次回作はフランス編なんでしょうか?
ブタブタ

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