Supernova

ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン/ブリュッセル1080、コルメス3番街のジャンヌ・ディエルマンのSupernovaのレビュー・感想・評価

4.6
孤独を脅かす日常の歪み。

パターン化された生活。無口な息子。夕食の用意。赤子を預けに来る隣人。虚無に浸るカフェでの一時。そして定刻通りに訪れる愛人。
未亡人、ジャンヌ・ディエルマンの3日間。

重い。長い。余白が尋常じゃなく多いのに一切の隙がない。その余白にあまりにもぎっしりと刻み込まれた幾多の感情から目が離せなかった。

逃避の手段がいつの間にか束縛へと変貌する秀逸な逆転現象。女性性の解放のはずがその実、女性性から、そして己の自由を奪い去り、男性性へその身を献上していたと知る。
これほどまでに生々しく人間の心が綻びていく過程を見たことがない。一人の女性の人生をそのまま覗いてるわけで、そこに存在する感情はすべて本物。下手したら恣意的な編集を施されたドキュメンタリーなんかより遥かにリアル。

『オアシス』を見た後の後味に似てる。
両者に通ずるあの何とも言えないラストカットは間違いなく本作を意識しているはず。
とにかく不快な虚無感。無情感。
そうかこの映画が由来だったのか。

女性がきっと共感する映画だと思う。なぜならこれは疑いようもなく究極のフェミニスト映画だから。男性が経験しうる疑似女性体験の中で最も現実に近い映画かも知れない。これ以上のものはない。

心地の良い映画ではないけど、年の瀬に素晴らしい映画に出会えた。
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