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上海異人娼館/チャイナ・ドールのakrutmのレビュー・感想・評価

1.8
上海(と言っても作中では香港の文字が見えるけど)の娼館を舞台に『O嬢の物語』のキャラが出てくる、寺山修司監督のアングラエロ映画。高橋ひとみの映画デビュー作だそうで、まあ寺山修司の秘蔵っ子だから仕方ないが、ふぞろいの前にこんな映画に出ていたのか。

原作は『O嬢の物語』の続編『ロワッシイへの帰還(Retour à Roissy)』とされているが、続編は未読でも『O嬢の物語』の読者としては、O嬢とステファン卿というキャラを借りただけであって、内容は全く関係ないと思う。そもそも、O嬢と(商売ではなくて)本気で交わった少年を殺してしまうステファン卿なんてあり得ないし。SM小説らしいからSMらしいシーン(高橋ひとみの鞭打ちはグッド!)でも入れておけ、くらいのノリにしか見えない。この当時はアングラが流行っていたのだろうが、こんなアングラ映画撮ってすごいだろ俺、みたいな感じを出されても、イタイタしさしか感じない。

なので、この映画を見て『O嬢の物語』を読もうと思う人がいたら、それは間違いです。全然違う内容(基本的に心理描写)なので。ちなみに『O嬢の物語』とその続編の著者ポーリーヌ・レアージュは長い間(本映画が公開された1981年当時も)身元を明かしていなかったが、1994年にドミニク・オーリーが公式に自分がポーリーヌ・レアージュ(=『O嬢の物語』の作者)であることを認めたのはいいけれど、続編『ロワッシイへの帰還』は書いていないらしい。

それから実際に性交しているらしいけど、本映画にそんな必要があるのかも甚だ疑問。性交ははっきりと映ってはいない(でもオーラルセックスは映っている)が、クラウス・キンスキーは自伝の中で本番をしたと言っているし、アリエル・ドンバールは数年前のインタビューでクラウス・キンスキーを激しく非難している。(アリエル・ドンバールがこんなクソ映画に出ていたなんて、個人的には大ショック。)この当時はコントラクトなんてきちんと結んでいないだろうし、はっきり言ってレイプ。もしかすると寺山修司は最初はそんなつもりはなかったけれど、強引なクラウス・キンスキーに何も言えずに、指をくわえたままだったのではないだろうか。大島渚の『愛のコリーダ』との関係を論じる人もいるみたいだが、きちんとした意図がある『愛のコリーダ』とは全く事情が異なる。正直言って、吐き気がする映画。
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