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愛の渦のellecinemaのレビュー・感想・評価

愛の渦(2013年製作の映画)
2.5
【ネタバレです】感想、長い。ダレる。以上。作品全体の印象は「中途半端」。原作知らないし、監督への思い入れもない。観終わった後、劇中の「高度なジョークだから」よろしく当方も斜に構えてしまったほど、消化不良を起こした本当になんてことない作品。各キャストの意欲、勇気、役者根性、その熱演には頭が下がるんですけどね。

いずれにしても、徹底して振り切れよ!って思ってしまう、納得できない自分なのでした。

それじゃあんまりなので簡単にまとめると、見知らぬ男女が六本木のマンションの一室に集まり、毎夜繰り広げる乱交パーティに明け暮れる姿を通して、性欲やそれに伴う感情に振り回される人間の本質を生々しく描き出していく、と言うお話。で、観ると「毎夜」っていうところからもっと時間軸に幅があると当方勝手に誤解、実際は一晩だったというところにも観終わった時に当方大いに不満。こりゃひでーわ…と思っていた。

しかし…終わったあとこの作品についてじわじわ考える自分がいた。別に考えたいと思うような価値はないし、むしろどうでもいいから考えたくないな、と思うくらいだったのに、今になってみるとこんな思考を巡らすこと自体が完全に監督の狙いというか思うツボにハマったと言うことなのか、と思うと複雑だし気分も良くない。

元々は仕事仲間から教わった映画で、R18+指定、乱交パーティという裏風俗という設定、服を着ているシーンが本編123分中の18分30秒のみという内容、監督が役者に求める演技力との兼ね合いから映画化に2年の歳月が費やされ云々…ふーん。と言いつつ、淫靡な印象から結局スケベ心と共に「コレは観なくては!」ゲージがMAXに至り劇場へ赴く。

劇場に着くと21時台のレイトショーなのに人がいっぱいで驚く。男女比もほぼ均等。デフォルトコンサバな40過ぎのおっさんとしては時代の成熟みたいなことなど遠い目な気分で感じながら、映画は始まる。

鑑賞前にあらぬ想像をしたけど、非日常なのは設定だけで、登場人物は服を脱いでバスタオル1枚になっても、結局日常を全て脱ぎ捨て切ることはできないし、そして日本で生きる人間の背徳感やら罪悪感やら後ろめたさ故の気まずさ、簡単に言うと理性に支配されて、どろーんと停滞した時間をとにかく全面的に押し出して映画はただただ進んでゆく。

そんなわけでこりゃダメだ、ハイ終わり!だったわけです。それなのに、自分はなぜ引っ掛かったのかを考えた結果ようやく少し整理できてきたので以下まとめておくと、オープニングとエンディングの仕掛けにまんまと引っ掛かったということなんです。

ラスト、全て終わって服に着替え、全員が来店時の元の姿に戻る。それまでお互い「裸」しか知らなかったゆえ今度は初めて「裸ではない」自分を晒してしまっていることを気付いた途端、場は一気に強烈な違和感を帯びたぎこちない空気に侵蝕されていく。対価を支払うことによって面倒を排除しているのにも関わらず、その光景に人間って興味深いなぁと。プロセスを経て得られるはずの己の欲望や肉体を先に見せてしまう結果、後から詳らかになる、普段なら真っ先にインプットされる「裸」以外のなんてことのない価値のない印象が「裸」を見せるドギマギと同様というかそれに近いドキドキの精神状態を生むと言う、至極当然な理に気付かされるわけです。人間は他者を恋愛でも性的でもいいけどそういった対象としての有り無しを元来判断する尺度を持っていて、見なりや持ち物、そこから想像される属性、センス、暮らしぶりみたいな印象から否応無しに他者を線引きするんだと言う現実を忘れている全員に思い出させ、その恐れ故みな羞恥心を表出させるんだなと。「裸にならないと結局なにもわかんないのよ」と言うのは、印象による選別を経た次の段階を指していて、必要十分条件では決してないことも改めて思ったりしました。つまり、肉体や欲望は対価である程度解決できる反面、
趣味や嗜好などの拘りから生まれる他者への印象をお金では買えたり変えたりすることは困難と言う当たり前のことなんですけどね。この設定では欲をお金で買ったはずなのに、そんな当たり前のことに気付かされてその欲自体足をすくわれるのがなんとも皮肉だなーと思ったりもしました。

長々と色々言ってはみたものの、結局映画としては、もっと劣情を刺激するような、情欲を催すような、めくるめく展開や息もつかせないバカバカしさが前面に押し出された方がよかったかな。オープニングがそうだっただけに。扇情的な機能性を備えた4つ打ちのキックとウワモノだけの典型的なハウスと映像との相乗演出は、強制的にインモラルな胸騒きと鼓動の高鳴りを促し、観客を擬似本番前に誘う催眠処方のようで圧巻の破壊力があったし、直截的にクレッシェンドさせていった果てのタイトルシーンは鳥肌モノでした。このいかがわしさで最後まで突っ走って欲しかったかな。

ぐるぐるしちゃってるけど、結局感じることより考えてしまったなぁと。

3014/03/19 テアトル新宿