ellecinema

ボクたちはみんな大人になれなかったのellecinemaのレビュー・感想・評価

4.5
高得点だけどオススメでもない。自分に、そして自分のまわりで起きたあんなことこんなことを映画が媒介となって自ずと色々と考えてしまう強力な誘導っぷりへのごく個人的な評価であり、加えて神宮前交差点でのWAVEのレコード袋、渋谷タワーレコード脇に座るシーンで一瞬足元が見えた森山未來の履く多分Nike Air Footscapeの初代モデル(今もなんとか現役としてボクのも頑張っててたまに履いている)、Paul Smithといえばの柄自体ではなく、その柄を手堅く良く見てもらえそうという動機で普通に着るだけへの批判、自分なりの哲学で着こなすこなれ感のないさま=没個性への抵抗とも取れた痛烈な一言とシンクロする一瞬の鮮やかなカットバック(とはいえ森山未來が着たそれはカッコいいのだが)、伊藤沙莉に勧められて買ったSonic YouthのブルーTシャツに続いて多分自分でこっそり買ってさりげなくシャツのインナーに覗く感じで彼女にもアピールしようとしたんだなとその健気さにやられてしまったGooのTシャツ、そして花恋に3.5付けたことを基準に、本作はプラス1.0ってところでのスコア。とはいえ、花恋だって麦くんが結局46まで出会いと別れを繰り返して気づいたら佐藤のようになってしまった鳴呼となる可能性も十分考えられるよなぁとかあちこちに考えが及んでしまったりしている。
さて。ツッコミどころもうーんと思うところもあるけど、それを上回る良くも悪くも自分の20歳〜50歳と向き合わせ立ち昇らせる、この映画の持つパワーには素直に脱帽した。自分も御多分に洩れず大人とかよくわからないまま、大事な人をいろいろ得ていろいろ失って生きてきたが、両親兄弟を除くと大人と言われる20歳からの30年、その出会ってつくった関係を結果的にすべて失っている。これからの自分はどうなるんだろうとか改めて映画の余韻に浸りながら反芻するくらいイタイ人間でもある。
ちなみに同世代だが自分はまったくオザケンファンではない。劇中印象的な天使たちのシーンに対しても達郎じゃんカーティスじゃん、なのに歌詞でなに斜に構えてスティーリー・ダンなんて歌うんだ、ってディスってた側。でもまわりで好きな人間もたくさんいたな。
あと、花恋は使われた楽曲がしっかり大人なマーケティングが施されて見事に紅白アーティストまで出したのに対して、偶然でも小沢健二の1stはサブスクにもない。そんな斜ってるのも自分寄りだし、トドメの馬の骨でボクは拍手しないわけにはいかなかった。天晴。
もう全員で集まることなんてきっと不可能であろう、当時所属した大学サークルの飲み会にいたみんなとコレ観れたら最高だろうなあ。もし死ぬ前に叶えてもらえるなら是非お願いしたいリストに入れておこう。