TAK44マグナム

インターステラーのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

インターステラー(2014年製作の映画)
4.6
クリストファー・ノーラン監督、マシュー・マコノヒー主演でおくる、未来を開拓するフロンティアスピリットを描いたSF巨編。絶望の淵にたつ人類を救うため、未知なる宇宙へと旅立つ壮大な物語。

分厚い。いつもクリストファー・ノーラン監督の映画を観ると感じるんですが、とにかく分厚い。
分厚い本を読んでいるかのような感覚。決してライトノベルなどではなく、ぎっちりと文字がページを埋め尽くしているような本です。疲れるけれど、読み終えると快感に変わるんですね。そんな読書と似た映画体験を提供してくれるノーラン監督の最新作をブルーレイで鑑賞しました。
できるだけ大きい画面で観ることをすすめているレビューサイトが多かったので、普段は3Dを鑑賞するさいに使っているプロジェクターを引っ張り出し、90インチサイズで鑑賞。
結果的に、やはり大画面に適した映画だと思いました。
宇宙の場面ではIMAXサイズになるのもあって、出来ればもっと大きなサイズで観たいぐらいですね。
ワームホールやブラックホールの描写、未知の惑星のスケール感など、本来ならIMAXサイズの劇場での鑑賞が望ましいのでしょう。

尺は169分と長いです。淡々とした語り口もあって(オマケに宇宙空間ではリアルに音もしないので静かすぎて)眠い時に観たら寝てしまいそう・・・かも。
しかし、テンポは悪くないので、冗長という事はありません。
そして、ワームホールを抜けてゆくあたりからは、めくるめく映像美とSFマインドに溢れた驚きの展開が待っていて、まったく飽きさせずに一気に魅せてくれます。
謎が謎のままで置き去りにされていたのが、クライマックスで絡んだ糸がほぐれるように解けてゆくカタルシス!

難しい理論の話は、何となく分かる程度の理解度しかありませんが、そんなに小難しくなく描かれていて、これなら中学生ぐらいから観ても面白いんじゃないでしょうか。
ちょっと、小学生だと何が起こっているのか理解するのが難しいかもしれません。

個人的にすごく感じたのは、宇宙空間って怖いなあってことです。人間が生きることができない無限(に見える)空間・・・怖くないですか?宇宙服着ていても窒息しそうな感覚が抜けなさそうです。
劇中だとロミニーが最初の方で訴えていましたね。
あの気持ち、よ〜く分かります!
「ゼロ・グラビティ」やもろもろの宇宙映画をそれなりに観てきましたが、本作が一番、宇宙の息苦しさを感じたのは何故なんだろう?「ゼロ・グラビティ」になんて宇宙服だけで彷徨う場面があるのに。
たぶん、この宇宙の旅が不安の塊だからなのかもしれません。
あまりにも行き先が未知すぎて、登場人物たちに感情移入してしまったんだと思います。
「ゼロ・グラビティ」は地球の周囲のみの話でしたしね。

マン博士の孤独も、我が身だと想像したら恐ろしくて耐えられないかもしれません。誰も助けにこないかもしれない星に何十年も一人っきりなんて絶対に無理!
マン博士でなくてもおかしくもなろうというものです。

極力、CGを排した画づくりも時代に逆行しているかのようですが、本作では限りなく成功しています。ミニチュアの方が何故だかリアルに見えるから不思議。
そして、機能的かつ斬新なデザインのロボットたちがユニークですね。ただの四角い板みたいなのに、いきなり素早く動いたり、とにかく大活躍で、すごい存在感を発揮しました。
会話の程度もカスタマイズできたりして、一体欲しくなっちゃいましたよ。
あと、やはり今まで観たことのないワームホールとブラックホールの表現が良かった。
ワープっていうと、日本のアニメや、映画ですと「スタートレック」や「スターウォーズ」で、それこそいくらでも表現されてきた宇宙SFの定番ですが、本作はそのどれをも上回るドライブ感が素晴らしかったです。

本作は言うまでもなく完璧なまでにSFですが、テーマは「愛」なのではないでしょうか(隠れテーマは反エコロジーらしいですけど)?
愛でさえも数値化して科学として扱うことが出来るぐらいに「進化」したら、人の持つ愛という感情に一体どんなことが出来うるのか?を描いているのだと思いました。
どこぞのテレビ番組ではありませんが、まさしく「愛は人類を救う」のです。
途方もない距離を離れた者同士がつながる、あの五次元の描写は衝撃的で、映画史に残る名場面!
例によって例のごとく、時空を超えた親子愛に涙腺が決壊寸前でしたよ。

ハードSFでありながら、中身は非常にハートフルで人間的な傑作ドラマです。時を超える方法を知りたければ、是非、観ることをオススメします。


セル・ブルーレイにて