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サタンタンゴのdeadcalmのレビュー・感想・評価

サタンタンゴ(1994年製作の映画)
4.0
主に長さ的な意味で伝説になっている作品がアマプラに来てしまったので、何日かかけて鑑賞。鑑賞方法としては邪道かもしれないけど、まじでこうでもしないと最後まで観ることは無理な身の上なので堪忍して欲しい。幸いいくつかの章に分かれた構成なので、複数話感覚で観ても良いとは思う。

それはそれとして、このテンポ感。音楽でいうと東京のBorisや大阪のCorruptedといった、だいたいのアルバムが70分で1曲とかの構成になっていて、ひたすら遅く重く執拗で漆黒の荒涼たるサウンドスケープが広がるスラッジ・ドローン系バンドの作品を鑑賞している感覚に似ているかもしれない。クソかっこいいけど、めちゃくちゃしんどいタイプ。

で、本作のタイム感に対してはさすがに不用意に「わかります」とは自分は言えない。まー普通に忍耐モードだったし、いつの間にか意識が逸れてる間に大事な台詞があったような気がしてちょっと巻き戻すけど別に大したこと言ってなかったりみたいなことを繰り返し、最後までバイブスを合わせられなかった。没入できるときもあれば本気でつまらないパートもいくらかあり、後者はマジの純粋な苦行であった。

しかしながらこのハンガリーの寒村の絶望的な不毛さ、圧倒的な寂しさ。ストーリーだけを見ていくと正直それ自体は大して面白くないのだが、それでも数時間かけてこの雨の降りしきる冷たい色の無い世界に「居た」自分の中には、何か痛烈な印象というか体験が残った。何だか本当にあそこにいて一緒に雨に濡れて寒々としていた気がしてくる。とりわけ有名な中盤の女の子と猫のシークエンスも、ショッキングというよりじわじわとダメージが来る。エアコン切ってクソ寒い部屋で末端冷え冷えの状態で観てたのは逆に良かったかもしれない。やっぱただの苦行じゃねえか。でも観て良かった。不思議だ。
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