すずき

ノスタルジアのすずきのレビュー・感想・評価

ノスタルジア(1983年製作の映画)
3.0
ロシア人の作家アンドレイは、助手のエウジュニアと共にイタリアにいた。
旅の目的は、かつてこの地で活動したのちに、故郷のロシアに帰国し自殺した音楽家サスノフスキーの取材だった。
最後の目的地である温泉地で、アンドレイは奇妙な男の噂を耳にする。
その男ドメニコは信仰心が強く、世界の終末が来る事を信じて7年も引き籠ったのち、家族に逃げられた男。
アンドレイは彼に興味を抱き、接触を図るが…

芸術性の高い映画を作るタルコフスキー監督が、故郷へのノスタルジーをテーマに撮った作品。
イタリアで製作されたこの作品の完成後、タルコフスキー監督は祖国ソビエトを出て亡命してしまう。
そんな監督自身の思いがストレートに現れたパーソナルな映画です。

タルコフスキー監督作は「ストーカー」に続き、これで2作目の鑑賞。
監督の映画の特徴である、ゆっっっっくりとした長回しの映像は相変わらず。
日本の伝統芸能の能のような独特の緊張感&眠気を誘う。
自然を捉えた映像は、モノクロとカラーを使い分け、どちらも非常に美しい。
やはりタルコフスキーと言えば、「水」が印象的で、廃墟のような屋内に澄んだ水が流れる、というロケーションは「ストーカー」と共通していた。
この昨日のもうひとつのテーマである「世界の救済」も、「ストーカー」にも込められていたのかな。
全然よくわからなかった「ストーカー」だけど、本作が少し理解の助けになるのかも。

しかし本作も難解で、やはり意味する所はよく分からない所も多々。
タルコフスキー作品を巡っていけば理解出来るのかしら。
本作の監督の個人的な背景とリンクしている、というのは興味深いけれど、作品単体では「面白い!」とは思えなかった。
タルコフスキー作品を絶賛出来るシネフィル達が羨ましく思う。