ムック829

ノスタルジアのムック829のレビュー・感想・評価

ノスタルジア(1983年製作の映画)
3.7
ロシアの詩人がイタリアへ来て、温泉地で出会った老人に頼まれ事をされる。

言わずと知れたロシアの名匠アンドレイ・タルコフスキー。
若い頃に通ぶりたくて、「ストーカー」と「惑星ソラリス」を鑑賞。
結果、映像が綺麗だったなくらいの感想しか湧かず、全然理解出来なかった。

そして今作。もう冒頭から眠くてヤバい。台詞は少なく、詩的で哲学的で頭がクラクラ。
画面の動きも少なく寝落ちしそうになるも、唐突なおっぱいポロリで一瞬だけ目が覚める。
なんとか完走はしたけれど、やっぱり、さっぱり分からなかった。

その難解さは、先日見た「8 1/2」が無茶苦茶優しく、親切だったなと感じるレベル。
登場人物たちが取る行動も台詞の意味も、全然理解出来なくて完敗でしたね。
考察サイトを見ないで全て理解出来た人は、もはや天才だと思います。

そんな中でも映像の美しさだけは理解出来て。特に水の表現が素晴らしい。
コンクリむき出しの無機質な部屋に、雨漏りしまくりの屋根から雨が降り注ぐ。
その雨音がなんとも心地よく、映像というより詩のように感じられて美しい。

主人公が水浸しになった建物に入っていき、膝まで水に浸かりながら少女に語りかけるシーン。
台詞の意味はさっぱりだけど、水の動き、全体の色味が美しすぎて、まるで一枚の絵画のように見えた。

老人からの頼まれ事を果たそうとするシーン。ロウソウを持ち温泉に入り、何度も火が消えては端から渡り直す。
ただ右へ左へ行ったり来たりするだけなのに、その超長回しが視覚的に面白くて目が離せなかった。

「1滴に1滴を加えても1滴」そんな哲学的な表現が散りばめられた、難解だけど美しい映画でした。
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