maya

グランド・ブダペスト・ホテルのmayaのレビュー・感想・評価

4.5
グスタフ氏の、洗練された振る舞いと時々まじる汚い言葉づかい、潔癖レベルの几帳面さと重要な局面での雑さが心地よく同居して、とても魅力的。
欧州紳士然とした彼が、難民ゼロに対し人権ある対等な相手として振る舞い、ゼロも自分に自信を持った振る舞いをする。真の紳士とは出自により決まるものではないし、良い子弟関係は互いを独立した個人として認め合う中に生まれるのだと感じた。
好きなシーンは、グスタフ氏がゼロの生まれた貧しい環境を指摘し「私はおまえをそのようには育てない」という箇所。そのセリフ自体には、赤の他人が誰かの人生を良い方向に導けるという希望が感じられるし、直後のゼロの「自分は難民だ」という告白を受け、すぐにグスタフ氏が謝罪する流れは、真の愛情は相手自身が何者であるかを尊重することが必要不可欠、ということが描かれていて本当に素敵。
詩を共有する3人が大好きです。ちょっとしたことで思いがけず命が終わってしまっても、詩や香水という後天的な文化を他人と共有したという体験は、何よりも尊く、人生を豊かにするものだと思います。
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